しゅう)” の例文
「なにまたすぐ出て来るよ」来太はむぞうさに一しゅうした、「……ときに杉浦君はどうしました、まだここにいるんでしょう?」
花咲かぬリラ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「……ち、畜生っ」と起きあがってくるのを、二度目の靴先が、さらに一しゅうを与えると、亭主の影の見失われたどぶから黒い泥飛沫どろしぶきがたかくあがった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「断乎として山城の案を一しゅうし、従前どおり伊豆屋伍兵衛を引き立てて然るべく存ずるが、越前どの、御高意如何ごこういいかが?」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
外部より見れば、さほどに苦心もなく一しゅうしてルビコン河を越えたらしく見られるも、今もなお歴史上の分岐点わかれめとしてうたわれているほど彼の苦心の跡が世界の人心にいんしてある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
と先ず一しゅうした。それぐらいの見識はあるのが当り前だ。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
とイバンスはケートのことばを一しゅうした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
とみるや、ひらり一しゅう
すこし庄左衛門の持ちかけ方が、父や妹を喜ばせようとし過ぎて、誇大でもあったせいか、よけいに反感を買って、手きびしくこう一しゅうされてしまった。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殿を、正しい者と、信じて、お愛しになるならば、側近のそしりやへだても、なぜ、一しゅうしてはくださらぬか。
こう師泰もろやす首藤通経すどうみちつねらが先陣していた。午ごろ、そこの敵も一しゅうし去った。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、蒋はこのところ、女色と酒にすさみきり、相手が相手だったせいもあろうが、たちまち脾腹ひばら雷霆らいていの一けんは食うし、ひたいにも一しゅうをうけてよろめき、見かけほどもなく、その精彩を欠いていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵庫の一しゅうに会うと、さなきだに気負い立っている五名は
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)