赤蟻あかあり)” の例文
彼女はもう泣く事にもいたのか、五月の冷々ひえびえとしたたたみの上にうつぶせになって、小さい赤蟻あかありを一ぴき一匹指で追っては殺していた。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
冬なのに蛇トカゲの爬虫類はちゅうるいがうようよ這いまわり、毒蛾どくが、サソリ、赤蟻あかあり、種類も知れぬ毒虫が群れをなして兵の眠りまで苦しめる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……なんと、兩足りやうあしから、下腹したばらけて、棕櫚しゆろのみが、うよ/\ぞろ/\……赤蟻あかありれつつくつてる……わたし立窘たちすくみました。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つっ立っている二人の脚から腹へ、腹から胸へと、赤蟻あかありがぞろぞろとはいあがってきた。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
へんな書き置きみたいなものを残して行きましたが、それがまた何とも不愉快、あなたはユダヤ人だったのですね、はじめてわかりました、虫にたとえると、赤蟻あかありです、と書いてあるのです。
男女同権 (新字新仮名) / 太宰治(著)
赤蟻あかありかれのモヂヤ/\したひげの中を草場くさはらかと心得こゝろえまはるといふ行體ていたらく
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
つれにはぐれし赤蟻あかあり
茴香 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
で、何の事はない、虫眼鏡で赤蟻あかありの行列を山へ投懸けてながめるようだ。それが一ツも鳴かず、静まり返って、さっさっさっと動く、熊笹がざわつくばかりだ。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)