がい)” の例文
あわただしい退がいかれて、勝政の麾下は、それぞれの旗幟きしと組頭の行くを目あてに、堀切の崖を、道も選ばずじ登り出した。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もしまたうつせがいが、大いなる水の心を語り得るなら、渚に敷いた、いささがいの花吹雪は、いつも私語ささやきを絶えせぬだろうに。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その中には太鼓たいこだのほらがいだののおとまじって、まるで戦争せんそうのようなさわぎが、だんだんとこちらのほうちかづいてました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
東の空がしらみだしたら一番がいせいぞろいの用意とおもえ。富士川が見えだしたら、二番貝で部署ぶしょにつき、三番貝はおれがふく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、さけんで反応はんのうがなかったように、そのかいがとおく八ごうへ鳴りひびいていっても、外城そとじろさくから、こたえきの合わせがいが鳴ってこなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
退がいを吹かせて、思い思いな散陣さんじんのまま、三井寺のいらかへも恟々きょうきょうと気をくばりながら、山科辺やましなへんまで引きあげた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここでの退がいは敵に気勢を揚げさせるばかり……。そちは馬をとばして、味方の陣頭にある江田行義、世良田せらた兵庫、篠塚伊賀、額田ぬかだ為綱、綿打わたうちノ入道らに、布令ふれまわれ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一番がいが海陸で鳴った。二番貝、三番貝と、すべて準備のあいずらしかった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)