まうけ)” の例文
九日ここぬかはいつよりもはや起出おきいでて、草の屋の五八むしろをはらひ、黄菊しら菊二枝三枝小瓶こがめし、五九ふくろをかたぶけて酒飯しゆはんまうけをす。老母云ふ。
果して人の入来いりきて、夕餉ゆふげまうけすとて少時しばしまぎらされし後、二人はふべからざるわびしき無言の中に相対あひたいするのみなりしを、荒尾は始て高くしはぶきつ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さうだつたナ、さういふ大切なことを忘れては済まんかつた、アハヽヽ併しあれらが来るまうけにするのならば、家に居てこしらへてしまふがよからう町はまたこん度としてナ。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
手の甲の血をひつつ富山は不快なる面色おももちしてまうけの席に着きぬ。かねて用意したれば、海老茶えびちや紋縮緬もんちりめんしとねかたはら七宝焼しちほうやき小判形こばんがた大手炉おほてあぶりを置きて、蒔絵まきゑ吸物膳すひものぜんをさへ据ゑたるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
妻なるものもまかりしと見えて、つかまうけも見えつるが、一三〇いつの年にともなきに、一三一まさりて悲しく侍り。しらせ給はば教へ給へかし。あるじの男いふ。一三二哀れにも聞え給ふものかな。
遊佐がまさぐれる半月形の熏豚ハム罐詰かんづめも、このまうけにとてみちに求めしなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)