)” の例文
言うのはやすいが、天地をえすような大時化の中でやることだから、斧を持って転げまわるばかりで思うようなこともできない。
重吉漂流紀聞 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
白糸は猿轡さるぐつわはまされて、手取り足取り地上に推し伏せられつ。されども渠は絶えず身をもだえて、えさんとしたりしなり。にわかに渠らの力はゆるみぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
めしくはせろ!』と銀之助は忌々いま/\しさうに言つて、白布はくふけてある長方形の食卓の前にドツカとはつた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
島の者は色々に評議をらした。大方は舟がえったのだと云う説であったが、中には何処かへ流れついて其のまま帰って来ないのだろうと云う者もあった。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
いくらおおいをけていても、提灯ちょうちんが持ちかねるほど雨風は横なぐりに吹きすさぶ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時々木を根こぎにしたり、家を引つくりへすやうな大風もやはりそれで、川のやうに、或る所から或る他の所へ流れて行く空気だ。空気は透明で殆んど色が無いから眼に見えない。
台石から取ってえした、持扱いの荒くれた爪摺つまずれであろう、青々と苔の蒸したのが、ところどころむしられて、日のくまかすかに、石肌の浮いた影を膨らませ、影をまた凹ませて、残酷にからめた
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)