行蔵こうぞう)” の例文
安房守昌幸は軍師としては当代ならぶ者なしという評をもっていたが、その行蔵こうぞうにはかんばしからぬ多くの過去がある。
日本婦道記:忍緒 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
平生の知己に対して進退行蔵こうぞうを公明にする態度は間然かんぜんする処なく、我々後進は余り鄭重ていちょう過ぎる通告に痛み入ったが、近い社員の解職は一片の葉書の通告で済まし
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
行蔵こうぞうは我に存す、毀誉きよは他人の主張、我にあずからず我に関せずとぞんじそうろう各人かくじん御示おしめし御座ござそうろうとも毛頭もうとう異存いぞん無之これなくそうろうおん差越之さしこしの御草稿ごそうこう拝受はいじゅいたしたく御許容ごきょよう可被下くださるべく候也そうろう
いわれは、久しく切所せっしょ引籠ひきこもって行蔵こうぞうをつつみ、手策てだてのなかりし柴田めも、いまみずから牢砦ろうさいを出で、勝ちにおごって遠く陣を張れるは、まさに、勝家が運の尽きよ。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
故友に於ては最も王達善おうたつぜんしたしむ。故に其の王助教達善おうじょきょうたつぜんによすの長詩の前半、自己の感慨行蔵こうぞうじょしてまず、道衍自伝としてる可し。詩に曰く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一切の行蔵こうぞう寒にある思ひ
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「……進藤主計を裁くにはここまでやる必要があるのだ、彼を容赦してはならぬ、有ゆる行蔵こうぞうを糾明し、為した事のすみずみを剔抉てっけつして徹底的に断罪しなければならぬのだ」
晩秋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
が、紅葉は早くも孤立の力なきを知って、初めから百名以上の応援隊を率いて起ち、固く結束して団体的に文壇を開拓し、進退行蔵こうぞうすべともにして自家の勢力を扶植した。