行方ゆくて)” の例文
文角鷲郎もろともに、彼の聴水が教へし路を、ひたすら急ぎ往くほどに、やがて山の峡間はざまに出でしが、これより路次第に嶮岨けわしく。荊棘けいきょくいやが上にひ茂りて、折々行方ゆくてさえぎり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
かまのやうな新月しんげつ物凄ものすご下界げかいてらしてたが、勿論もちろんみち案内しるべとなるほどあかるくはない、くわふるに此邊このへんみちいよ/\けわしく、とがつた岩角いはかどわだかま無限むげん行方ゆくてよこたはつてるので
この平地が次第にゆるい斜面をつくって、高粱と高粱との間を流れている、幅の狭い濁り川が、行方ゆくてあかるく開けた時、運命は二三本の川楊かわやなぎの木になって、もう落ちかかった葉を低いこずえに集めながら
首が落ちた話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
たとへば夜けてから澤山の獲物えものを持ツて獨でくらい路を歸ツて來ると、不意に行方ゆくてから、人魂ひとだまが長く尾を曳いて飛出したり、またはのかはうそといふ奴が突然だしぬけ恐ろしい水音をさせて川に飛込むだり
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
自分の家の庭へ出ようとした、四隣あたりは月の光で昼間のようだから、決して道を迷うはずはなかろうと、その竹薮へかかると、突然行方ゆくてでガサガサとあだかも犬でも居るような音がした、一寸ちょっと私も驚いたが
怪物屋敷 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)