落着らくちゃく)” の例文
番頭脇坂山城守は、不取締りの故をもって一件落着らくちゃくまで閉門謹慎へいもんきんしんを仰せつかっている。番士一同もそれぞれ理由に就いて詮議せんぎを受ける。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
僕は誰にでも明言してはばからない通り、いっさいの秘密はそれを開放した時始めて自然にかえ落着らくちゃくを見る事ができるという主義をいだいているので
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一同顔を見合せましたまゝ別に評議もいたしませぬが、以心伝心で文治に十分の利を持たせ、結句平林は自業自得、殺され損ということに落着らくちゃくいたしました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……こうした責苦せめくは、ほうっておいてもおそらく長くは続かなかったろうが……そこへ降ってわいた出来事が、まるで落雷らくらいのように一挙にすべてに落着らくちゃくをつけ
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「おう、お待ちしていた。それになお、先ごろ御出府の件も、まずは無事に落着らくちゃくして、およろしかったの」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんなわけで、山岸は無事に警察から還されて、この一件はなんの波瀾をもまき起さずに落着らくちゃくしました。
白髪鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
清水や古田の事がすっかり落着らくちゃくした時分よ、あたしのこちらへ上がっている事をどこで知ったのか、内野さんと下村さんとから、しかも妙じゃない事、同じ日に手紙が来たの。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
右の趣を石出帯刀いしでたてわきまで申し出で、聞済ききずみになりて草鞋わらじを下げ渡されたが、その翌日亭主は斬罪に行なわれ、女房は重追放で落着らくちゃくしたそうだ、最も牢内には却々なかなか化種ばけだねは、豊富であると
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
彼もみずからその身の如何に落着らくちゃくするかを知らず、ただ曰く
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
かたわらより見物して水掛論の落着らくちゃくを待つのみ。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ぜひなく縛についたという落着らくちゃくらしいのです。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「暫らくちゃ分る。」という落着らくちゃくに終った。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
落着らくちゃく
訴訟にすると落着らくちゃくまでに長い時間のかかる事も恐れました。私は修業中のからだですから、学生として大切な時間を奪われるのは非常の苦痛だとも考えました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つまり先方の意見に対して、その通りとか、再吟味とか、あるいは奉行所の意見を書き加えてやるとかするので、それに因って初めて代官所の裁判が落着らくちゃくするんです。
半七捕物帳:24 小女郎狐 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
途中において護送者が男は陰嚢いんのう女はちちうって即死せしめ、死骸を路傍の穴へ蹴込けこみて、落着らくちゃくせしむる事あり、ある時亭主殺しの疑いある女にて、繋獄けいごく三年に及ぶも証拠あがらずさればとて追放にもなし難く
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
一波瀾ひとはらんを生じた刑事事件はこれで一先ひとま落着らくちゃくを告げた。迷亭はそれから相変らず駄弁をろうして日暮れ方、あまり遅くなると伯父におこられると云って帰って行った。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小柳は自滅して仕置を免かれたが、その死に首はやはり小塚ッ原にけられた。金次は同罪ともなるべきものを格別の御慈悲を以て遠島申し付けられて、この一件は落着らくちゃくした。
半七捕物帳:02 石灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
長平は無論に死罪でしたが、長吉の方はまだ子供でもあり、どこまでも親のかたきを討つつもりでやった仕事ですから、かみにも御憐愍ごれんびんの沙汰があって、遠島えんとうということで落着らくちゃくしました。
半七捕物帳:19 お照の父 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
相手は殺され損で落着らくちゃくした。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)