-
トップ
>
-
菓子皿
>
-
くわしざら
其所へ
下女が三
尺の
狹い
入口を
開けて
這入つて
來たが、
改ためて
宗助に
鄭重な
御辭儀をした
上、
木皿の
樣な
菓子皿の
樣なものを、
一つ
前に
置いた。
「
何だつて、あんなに
笑ふんだい」と
夫が
聞いた。けれども
御米の
顏は
見ずに
却つて
菓子皿の
中を
覗いてゐた。
しばらくして、
御米が
菓子皿と
茶盆を
兩手に
持つて、
又出て
來た。
藤蔓の
着いた
大きな
急須から、
胃にも
頭にも
應へない
番茶を、
湯呑程な
大きな
茶碗に
注いで、
兩人の
前へ
置いた。