茶店ちやてん)” の例文
これは凹巷の七律の七八である。凹巷と田孫二人とが辞し去る時、霞亭はこれを勢田の橋に近い茶店ちやてんまで送つた。「長橋短橋多少恨。満湖風雨送君帰。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
をりからせなに、御新造ごしんぞ一人いちにん片手かたて蝙蝠傘かうもりがさをさして、片手かたて風車かざぐるまをまはしてせながら、まへとほきぬ。あすこが踏切ふみきりだ、徐々そろ/\出懸でかけようと、茶店ちやてんす。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
馬廻うままはりに美男びなんきこえはれど、つき雲井くもゐちり六三ろくさなんとして此戀このこひなりたちけん、ゆめばかりなるちぎ兄君あにぎみにかヽりて、遠乘とほのり歸路かへりみち野末のずゑ茶店ちやてんをんなはらひて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二十九日に蘭軒は天野樵墩せうとん、子柏軒の二人と共に郊外を歩し、僧混外こんげを金輪寺に訪ひて逢はず、茶店ちやてんに憩うて鈴木玄仙に邂逅し、遂に鹿浜しかはまに到つて帰つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そこへ臼田才佐うすださいさと云ふものが来掛かつたので、それをもいざなつて、三人で茶店ちやてんに入つて酒を命じた。三人が夜半よなかまで月を看てゐると、雨が降り出した。それからおの/\別れて家に還つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)