若鮎わかあゆ)” の例文
さかなは何があるな。甲州街道こうしゅうかいどうへ来て新らしい魚類を所望する程野暮ではない。何か野菜物か、それとも若鮎わかあゆでもあれば魚田ぎょでんいな」
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
六角の象嵌鍔ぞうがんつばあいよりの柄糸つかいと、めぬきは四代光乗こうじょうが作らしく、観世水かんぜみず若鮎わかあゆめこまれ、柳しぼりのさやごしらえ、なんともいえない品格がある。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
春の小さな若鮎わかあゆが流れをさかのぼって泳ぐ姿が見られ、目もまばゆいほどのおもしろい景色であった。
やれ懐かしかったと喜び、水はぬるみ下草はえた、たかはまだ出ぬか、雉子きじはどうだと、つい若鮎わかあゆうわさにまで先走りて若い者はこまと共に元気づきて来る中に、さりとてはあるまじきふさよう
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
青菜あおなの雑炊……青菜を琅玕翡翠ろうかんひすいにして出す。生の千切りだいこん雑炊……だいこん煮込みめしに似たものの雑炊。天下のピカ一ふぐ雑炊。白魚しらうおと青菜の雑炊。若鮎わかあゆの雑炊。このわたの雑炊。
彼女の食慾をそそるものは若鮎わかあゆの塩焼だけであるが、これはさっき、未亡人が礼を云っていたところから察すると、沢崎が氷詰めにして土産に持って来たものを、この家で焼いて出したので
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
真理はまさしくいつの時代にも若鮎わかあゆのように溌剌はつらつとした若々しい綺麗きれいな娘です。創造し、活動して、まぬもの、それが真理です。けだし、永遠に古くして、かつ永遠に新しいもの、それが真理です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
若鮎わかあゆの登る季節になつた。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
浅瀬の若鮎わかあゆのやうに
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
その底には、もう若鮎わかあゆがチラチラ光っているだろう。南国らしい黄花こうかの畑、変化に富んだ両岸の風景もかくべつだが、何よりはその大河の、砂と水のきれいなことといったらない。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若鮎わかあゆの塩焼」
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)