自在鉤じざいかぎ)” の例文
あるいは地獄の自在鉤じざいかぎ大隅肝属おおすみきもつき)などの名も各地にあって、地底の国の炉の鉤の紐だなどと、困りながらも農夫がしゃれたのである。
と、自在鉤じざいかぎかっている下には、つい昨夜さくや焚火たきびをしたばかりのように新しいはいもり、木のえだえさしがらばっていた。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
親子三人は、声を合わせて笑ったが、久住は、苦渋な顔で、自在鉤じざいかぎの鉄瓶から、徳利を掴み出して、じぶんで注いだ。
朝から晩まで、かまど自在鉤じざいかぎに鍋が一つかっている。冬は、湯がたくさんいるので、この鍋が幾度となく、いっぱいになったり、からっぽになったりする。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
北の国々は寒い地方ですから囲炉裏いろりとは離れられない暮しであります。それ故必然にで用いるもの、自在鉤じざいかぎとか、五徳ごとくとか火箸ひばしとか灰均はいならしなども選びます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
自在鉤じざいかぎには籠目形かごめがたの鉄瓶がずっしりと重く、その下で木の根が一つ、ほがらほがらと赤い炎を立てている。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
右手めての刀で、炉の上に懸かっている自在鉤じざいかぎ煤竹すすだけを斬り落そうとしているのである。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自在鉤じざいかぎには薬缶やかんが掛かり薬缶の下では火が燃えている。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大将の鬼は旦那座だんなざから一足びに土間へね下りようとして、囲炉裏いろりにかけた自在鉤じざいかぎに鼻のあなを引っかけてしまった。すると
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
となえつつ、自由にどこの家にも入って、自在鉤じざいかぎのあたりまでもいぶしまわったからで、ヨガとは日中のカすなわちぶよに対して、夜の蚊をそういうのである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
炉には、自在鉤じざいかぎに大薬缶やかんが懸けてあり、隅の空箱の上には、さん俵が敷いてある。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山形の町には鍛冶屋も多く、鉄製のよい自在鉤じざいかぎを作るのを見かけるでしょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ここで書き添えておきたいのは、北陸地方で見られる自在鉤じざいかぎであります。特に越前、加賀、越中のものは立派で、の道具としては日本一でありましょう。堂々とした姿のものがあります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
たいすくい込み、どんと、次の部屋まで投げつけると、その脚か手が、炉の上の自在鉤じざいかぎへぶつかったのであろう。朽ち竹の折れる響きと共に、炉の口から、火山のような白い灰があがった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)