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背後向
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うしろむき
ふりがな文庫
“
背後向
(
うしろむき
)” の例文
小さな
髷
(
まげ
)
に
鼈甲
(
べっこう
)
の耳こじりをちょこんと
極
(
き
)
めて、手首に
輪数珠
(
わじゅず
)
を掛けた五十格好の
婆
(
ばばあ
)
が
背後向
(
うしろむき
)
に坐ったのが、その
総領
(
そうりょう
)
の娘である。
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのままには帰らないで、溝伝いにちょうど
戸外
(
おもて
)
に向った六畳の出窓の前へ来て、
背後向
(
うしろむき
)
に
倚
(
よ
)
りかかって、
前後
(
あとさき
)
を
眗
(
みまわ
)
して、ぼんやりする。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
桂木は倒れようとしたが、
踵
(
くびす
)
をめぐらし、
衝
(
つ
)
と
背後向
(
うしろむき
)
になつた、霧の中から大きな顔を出したのは、
逞
(
たくま
)
しい馬で。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ぱッと
末枯
(
うらがれ
)
の路の上に、燃え立つを見るや否や、慌ててくるりと
背後向
(
うしろむき
)
、
踵
(
くびす
)
を逆に
回
(
めぐ
)
らしたのを、袖で留められた形になって、足も
地
(
つち
)
にはつかずと知るべし。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
こなたへのさのさと来掛った、と見ると、ふと頬
被
(
かむ
)
りの
裡
(
うち
)
の目ばかり、……そこに立留まった清葉たちを見るや否や、ばねで弾かれたかと思う、くるりと
背後向
(
うしろむき
)
。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
巡査の靴音が橋の上に
留
(
や
)
んで、
背後向
(
うしろむき
)
のその黒い影が、探偵小説の
挿画
(
さしえ
)
のように、保険会社の鉄造りの門の下に、寂しく
描出
(
えがきいだ
)
された時、歎息とともに葛木はそう云った。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
はつと
袖屏風
(
そでびょうぶ
)
して、
間
(
なか
)
を
遮
(
さえぎ
)
ると
斉
(
ひと
)
しく、御簾中の姿は、すつと
背後向
(
うしろむき
)
に成つた——
丈
(
たけ
)
なす黒髪が、
緋
(
ひ
)
の
裳
(
もすそ
)
に
揺
(
ゆら
)
いだが、
幽
(
かすか
)
に、雪よりも白き
御横顔
(
おんよこがお
)
の気高さが、
振向
(
ふりむ
)
かれたと思ふと
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
五助は
背後向
(
うしろむき
)
になって、押廻して三段に釣った棚に向い、右から左のへ三度ばかり目を通すと、無慮四五百挺の
剃刀
(
かみそり
)
の中から、箱を二挺、紙にくるんだのを一挺、目方を引くごとく
掌
(
てのひら
)
に据えたが
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
歌舞伎座
(
こびきちょう
)
のすっぽんから
糶上
(
せりあが
)
りそうな美しいんだから、驚きましたの何のって、ワッともきゃっともまさかに声を上げはしませんが、一番
生命
(
いのち
)
がけで、むっくり起上ると、フイと
背後向
(
うしろむき
)
になって
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
背
常用漢字
小6
部首:⾁
9画
後
常用漢字
小2
部首:⼻
9画
向
常用漢字
小3
部首:⼝
6画
“背後”で始まる語句
背後
背後姿
背後手
背後袈裟
背後楯
背後状
背後影
背後態
背後抱
背後指