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老叟
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らうそう
老叟は
笑つて『さう言はるゝには
何か
證據でも
有のかね、
貴君の
物といふ
歴とした
證據が有るなら
承はり
度いものですなア』
静坐
稍久し、無言の妙漸く熟す。暗寂の好味
将に佳境に進まんとする時、破笠弊衣の一
老叟わが前に顕はれぬ。われ
依ほ無言なり。彼も唇を結びて物言はず。
老叟は
靜かに石を
撫でゝ、『
我家の石が
久く
行方知ずに居たが先づ/\
此處にあつたので
安堵しました、それでは
戴いて
歸ることに
致しましよう。』
すると
一日一人の
老叟が
何所からともなく
訪ねて來て
祕藏の石を見せて
呉れろといふ、イヤその石は
最早他人に
奪られて
了つて
久しい以前から無いと
謝絶つた。