しっか)” の例文
なんにしても夜が更けているんだから閉めてる家ばかり、仕方がないと駈け出しますると、勘太はたちまち追いすがり、しっかたもとを押えて
この時までもしっかりと、しないを握っていた十本の指を、まず順々に解いて行き、やがてすっかり解いてしまうと、上半身を抱き起こした。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ワイヤとチエンで、どんなにしっかり縛り付けといたって、一旦辷り出したとなれあ、人間の力で止める事が出来ない。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
其時そのとき、おつぼねが、階下へ導いてざまに、両手でしっかと、くせもののかたな持つ方の手をおさへたのである。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さては迷惑、一生可愛かわゆがって居様いようと思う男に。アレうそ、後先そろわぬ御言葉、どうでも殿御は口上手と、締りなくにらんでつ真似にちょいとあぐる、繊麗きゃしゃな手首しっかりととらえやわらかに握りながら。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
併し、よっぽどしっかりとふんどしを締めてかからないと駄目だよ……なぞと脅かしておいて、その間に吾輩は悠々とスコッチをあおり、ハバナをくゆらそうという寸法だ……ハハン…………。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この事件は、よほど頭をしっかりさせて研究しないと、途中で飛んでもない錯覚に陥るおそれがあると云って警告しといたじゃないか……吾輩は姪の浜、浦山の祭神、うず権現ごんげん御前おんまえにかけて誓う。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)