素直まっすぐ)” の例文
ここは佃町よ、八幡様の前を素直まっすぐに蓬莱橋を渡って、広ッを越した処だ、いか、わしは早船の船頭で七兵衛とうのだ。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鼠のつばをぐったりとしながら、我慢に、吾妻橋の方も、本願寺の方も見返らないで、ここをあてに来たように、素直まっすぐに広小路を切って、仁王門を真正面まっしょうめん
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
猶予ためらいながら、笹ッ葉の竹棹たけざおを、素直まっすぐいた下に、びんのほつれに手を当てて、おくれをいた若い妓の姿は、ねがいの糸を掛けたさまに、七夕らしく美しい。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何か言いそうにした口の、ただまたニヤニヤとなって、おおきよだれ滴々だらだらと垂るる中へ、素直まっすぐにずきんと刺した。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(いえ、お伺い申しますまでもございませんが、道はやっぱりこれを素直まっすぐに参るのでございましょうな。)
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真砂町と聞いただけで、主税は素直まっすぐ突立つったち上る。お蔦はさそくに身をかわして、ひらりと壁に附着くッついた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こもりをした、千里のさき三年のあとのあとまで見通しだと、人気といっちゃあおかしく聞えますが、また隠居殿の曲った鼻が素直まっすぐになりまして、新聞にまで出まする騒ぎ。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
箱を押すとすッと開いて、研澄とぎすましたのが素直まっすぐに出る、裏書をちょいとなが
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不可いかんぞ、これは心細い。」と、苦笑いをしながら立直って、素直まっすぐステッキくと、そのまま渡り掛けたのは一石橋。月はないが、秋あかるく、銀河の青い夜の事。それは葛木晋三である。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかしそのまま素直まっすぐに立ってるのが、余りつらかったから又た歩いた。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
軍鶏はその肩の辺りまで素直まっすぐに宙へ飛んだのである。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と胸を素直まっすぐにした、が、またその姿もかった。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)