紅紫こうし)” の例文
素通りした人の多かったのも無理はありませんが、実はその暖簾のれんの陰にこそ、紅紫こうしとりどりの女の歴史が、画かれてあったのであります。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
雛店というと、目の前に描き出されるのは直ちに店一杯真赤な色をしている、その赤い中に、金色もあれば、青色もあり、紫色もあり、白色もあり、紅紫こうし燦爛さんらん、人目をくらまするような感じである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
林のはずれは広い草原くさはらになっていた。そこに十坪位の小さい池があってきれいな水をたたえていたが、その池のへりにも紅紫こうしとりどりの躑躅や皐月の花があった。憲一はその池のへりへ往って腰をかけた。
藤の瓔珞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
いろ三つをかさねて、ひた/\とうつつて、あゐうかべ、みどりひそめ、くれなゐかして、なみや、かへかぜに、紅紫こうしりんはなたちまき、藍碧万顆らんぺきばんくわほしたちまひらいて、さつながるゝ七さいにじすゑ湖心こしんもつとふかところ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)