精舎しやうじや)” の例文
旧字:精舍
奥様はもう涙ぐんで、蔵裏くりの内をぐる/\廻つて歩いた。長い年月の精舎しやうじやの生活は、この女の性質を感じ易く気短くさせたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
やがてナブルスに着き、羅甸らてん派の精舎しやうじや宿しゆくす。総じてパレンスタインの僧舎は、紹介状だに持参せば、旅客を泊むる仕組にて、此処にも幾個の客床かくしやうを設けあり、食堂もそなはる。
劒ヶ峰の一角先づひうちを発する如く反照し、峰にれる我がひげ燃えむとす、光の先づ宿るところは、むね高き真理の精舎しやうじやにあるをおもふ、太陽なるかな、我は現世に在りてたゞ太陽をさんするのみ
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
あはれ、驚破すは、火とならむ、噴水ふきあげも、精舎しやうじやも、空も。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
精舎しやうじやの壁の地獄絵ぢごくゑ
騎士と姫 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
とある精舎しやうじやの門から
測量船 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
七宝の精舎しやうじやを建て
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新しい膳に向つて、うまさうな味噌汁のにほひを嗅いで見た時は、第一この寂しげな精舎しやうじやの古壁の内に意外な家庭の温暖あたゝかさ看付みつけたのであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いや深く、いや重く、泣きしづむたまし精舎しやうじや
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
宵の勤行おつとめかねの音は一種異様な響を丑松の耳に伝へるやうに成つた。それは最早もう世離れた精舎しやうじやの声のやうにも聞えなかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
精舎しやうじやまた水晶とこごときうれひやぶれて
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)