端座たんざ)” の例文
翁は今日も余等が寝て居る内に、山から引いた氷の様な水を浴び、香をいて神明に祈り、机の前に端座たんざして老子を読んだのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「いま、お願いして来た。十年一日のように、あの茶頭巾ちゃずきんを召され、冬日の障子のうちに、じっと、端座たんざしておられるおすがたを拝すと、やはりお年齢としが思われる」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宿屋の一室に端座たんざし、過去を思い、現在をおもんばかりて、深き憂いに沈み、婦女の身のとど果敢はかなきを感じて、つまらぬ愚痴ぐちに同志をうらむの念も起りたりしが、た思いかえして
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ひそかに持って来て寝床の上に端座たんざし鏡を見ながら我が眼の中へ針をした針を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その趣味しゆみしぶれいげると、三上みかみがその著名ちよめいなる東京市内出沒行脚とうきやうしないしゆつぼつあんぎやをやつて、二十日はつかかへつてないと時雨しぐれさんは、薄暗うすぐら部屋へやなか端座たんざして、たゞ一人ひとり双手もろて香爐かうろさゝげて、かういてゐる。