窮命きゅうめい)” の例文
「旦那の三郎兵衛が持っていたはずだが、それは表向きで、らしめのための窮命きゅうめいだから、鍵はツイ廊下の柱にブラ下げてあるそうですよ」
萩之進を窮命きゅうめいどうように押しこめて詮議せんぎをなさいましたが、もとより根もないことでございますから、陳弁ちんべんいたしようもない。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「申すなッ、娘に変り年増に変り、なかなか正体現さぬと聞いておるわ。自ら飛び出して来たは幸いじゃ。窮命きゅうめいしてつかわそうぞ。参れッ」
はい、前には徳川万太郎様が押し込められていた窮命きゅうめい屋敷で、先頃からそこに御厄介やっかいになっている狛家こまけの召使い次郎と申す者でございます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いいや、いけねえ、あの野郎には、あれでもまだ身にみたというところまでは行かねえんだ、もうちっと窮命きゅうめいさしてやる。
附けて外へお出でなさらないように致しましょう、またおっかさまも御心配な事でしょうから、懲らしめの為に当分のうち窮命きゅうめいなさるように、私が万事計らいましょう
談義が長いので皆辟易へきえきする。次は青磁せいじ香炉こうろだった。この二品ふたしなで一時間余り喋り続けた。その間、私達二人は身動きも出来ない。これくらい窮命きゅうめいすれば堪忍して貰う値打が充分あると思った。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
自身の押えた二人をも、手早くそこの柱に窮命きゅうめいさせておくと、六松の逐電先ちくでんさきをつき止めるべく、ただちに根津権現裏目ざして足を早めました。
「じゃ、矢張り、悪人たちの手で、傀儡かいらいに使われたのだろう。しかし、そのわが子を、作兵衛は何でこんなに窮命きゅうめいするのか」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
運は悪く、悪いところへ通りかかったのが兵馬さんの因果、身の明りの立つまでは、ああして甲府の牢内に窮命きゅうめいしておいでなさらなくてはならねえ
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「これが森三というのでございましょう。私どもの話を立ち聴きして、注進に出かけるところでした。明日まで窮命きゅうめいさせましょう、縄と手拭を——」
……そののち、ようやくお眼にかかれるようになり、その時のお話では、わちきのところへしげしげお渡りになったことがお父上さまの耳に入り、手ひどい窮命きゅうめいにあって
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「矢っ張り家のものは美味うまい。彼方あっちじゃ窮命きゅうめいしたよ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「これこれ望月、僅か三千両の金のために貴様がこうして窮命きゅうめいを受けるばかりではなく、あの八幡村から来た貴様の花嫁も追ってこんな目に会うのだぞよ」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「設計図は私のものですから、設計図の被害者なら、私でなければなりません。失礼ですが、男爵にはあの娘を窮命きゅうめいする何んの権利も持っては居られない筈です」
判官三郎の正体 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「しかし、窮命きゅうめいされているようだな。……オヤオヤ、夜番に貰った火種も消えてしまった」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「悪いことは出来ない。窮命きゅうめいしたよ」
田園情調あり (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「どうも、窮命きゅうめいをさせて済まなかった、済まないついでに若い衆さん、お湯をいっぱいおくんなさい」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
水神すいじんの森の中で、花時は大した繁昌ですが、そのお銀と申す、如何いかがわしい女に溺れ、家を外にいたしますので、この春から一と間に押し込め、窮命きゅうめいをさせておりました。
「近ごろ、わしの恩寵おんちょうれすぎて、図に乗っていた又四郎のやつ。是が非でも引っ捕えて、窮命きゅうめい申しつけねばならん。——もし手抗てむかいなさば討ち取ってもかまわぬ。すぐからめて来い」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いっぷくの間にここまで連れて来られるのだが、それを本人が希望しないで、少なくとも七日間はあれに窮命きゅうめい籠城ろうじょうしていなければならぬというのは、何か事情があるのだろう。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お邸へ対して済まねえと思えばこそ、いまだに、二階の一間へ抛り込んで窮命きゅうめいさせてあるものを、その上にも、罪を着せられちゃあ、親として黙ってお帰し申すわけにはゆきませんぜ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そいつは一番先に出さなきゃ。——窮命きゅうめいも時によりけりだ」
『そんな甘いお言葉をかけて下すっちゃ困ります。どうせ、ろくな真似をしたんじゃございますまい。お邸へ対しても済まねえことです。帰ったら、うんと、窮命きゅうめいしてやらなくっちゃなりません』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それはわからないが、——俺は明日の朝、御納戸おなんど町の河西源太という人の家へ行ってみようと思う、お前は時次に逢ってみてくれないか。お松は一と晩くらい番所で窮命きゅうめいさせるもよかろう、浮気の虫封じになるぜ」
「まあ、暫くはここで窮命きゅうめいしろ」