とゞ)” の例文
かれは昨夜ゆうべも二人の涙が床を浸したことを思ひ起した。その涙をとゞめるためにすら二人は互ひに相抱かなければならなかつたことを思ひ起した。
浴室 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
彼やがてフラーテにむかひていひけるは、汝等とゞむるものなくば、請ふ右に口ありや我等に告げよ 一二七—一二九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
戸外そとることをとゞめられた、それゆゑマンチュアの急用きふよう其場そのばめられてしまうたわいの。
覺まされなば一大事と思へばそばへ立寄てやいばもつしつかとゞめ聲をひそめて云るやうむすめはやまる事なかれ委細ゐさいの事は書置かきおきにてちく諒知しようちなしたりし流石さすがは大藤武左衞門の娘だけあり無き名をおひ遺恨ゐこん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
定めしお金が無かつたらうとおもふをとゞめ得ざりき。
青眼白頭 (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
はたとゞめえじ、落葉らくえふの風のまにまに吹き交ふも。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
私はまた知らない男女の深い心の底のさまが、歴々と私の眼に現はれて見えて来るのをとゞめることが出来なかつた。
ある日 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
名所圖繪をひもときて、幼き心に天下またこの好山水かうさんすゐありやと夢みしは昔、長じて人の其山水を記せるの文を讀み、かく其勝そのしやうを説くを聞くに及びて、興湧き胸躍りて、殆どそをとゞむるに由なかりき。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)