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硝子盃
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コツプ
お
婿さんが、
硝子盃に、
葡萄酒をお
計んなさる
間——えゝ
然うよ。……お
寝室には
私と三
人きり。……
誰も
可厭だつて、
看護婦さんさへお
頼みなさらないんだそうです。
水を……
水をと
唯云つたのに、
山蔭に
怪しき
伏屋の
茶店の、
若き
女房は、
優しく
砂糖を
入れて
硝子盃を
與へた。
藥師の
化身の
樣に
思ふ。
人の
情は、
時に、あはれなる
旅人に
惠まるゝ。
……
義兄さんがお
心づくしの
丸薬ですわね。……
私が
最初お
見舞に
行つた
時、ことづかつて
参りました……あの
薬を、お
婿さんの
手から、
葡萄酒の
小さな
硝子盃で
飲るんだつて、——えゝ、
先刻……