砂丘さきゅう)” の例文
いつの間にやら、第三コメディ「砂丘さきゅうの家」は幕となった。弦吾は同志帆立に脇腹わきばらを突つかれて、あわてて舞台へ拍手を送った。途端とたん
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
砂丘さきゅうをのぼりきると材木座ざいもくざのほうに続く道路に出た。葉子はどうも不思議な心持ちで、浜から見えていた乱橋みだればしのほうに行く気になれなかった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
また山の近くには細かい砂利のあること、ことに北上山地のへりには所々この泥岩層の間に砂丘さきゅうあとらしいものがはさまっていることなどでした。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
砂丘さきゅうの下で一泊した、三日目の朝に、一同はこれより北は砂漠さばくであることをたしかめたので、ふたたび一泊河へひきかえし、南の岸にわたった
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
和田ノみさきから塩打山の低い砂丘さきゅうを左にひかえ、右には正成の会下山えげさんようし、いわば大手の関門をすものとしていい。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕等は低い松のえた砂丘さきゅうの斜面に腰をおろし、海雀うみすずめの二三羽飛んでいるのを見ながら、いろいろのことを話し合った。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
けれども、南がわは、砂丘さきゅうかべがくずれおちて、まるで大きな門のようになっています。そこを通って、ヴェッテルン湖にでることができるのです。
三人の流人るにんたちは、海を見下ろす砂丘さきゅうの上で、日向ひなたぼっこをしていた。ぽかぽかとした太陽の光に浴していると、ところどころ破れほころびているあわせを着ていても、少しも寒くはなかった。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ふたりは、やわらかい、美しいすなでおおわれている、さびしいはまべに立っていました。海べにそって、テンキ草のえている砂丘さきゅうが、長くつづいています。
そこは宇美川うみかわ久原川くはらがわの流れががっし、また支流は縦横に走って、沼や芦原や、いたる所、砂丘さきゅうの雑草もふかく、わけて足場のわるい平野でおざる。——そして西はいちめん多々羅の浪打ちぎわ。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
倉地はそういって海岸線に沿うてむっくりれ上がった砂丘さきゅうのほうに続く砂道をのぼり始めた。葉子は倉地に手を引かれて息気いきをせいせいいわせながら、筋肉が強直きょうちょくするように疲れた足を運んだ。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
工場こうじょうの東にあたる、じつにすばらしい場所ばしょに、エンチェーピング市があります、細長ほそながいヴェッテルンの東がわと西がわには、高くてけわしい砂丘さきゅうがあります。