石見いはみ)” の例文
繩付を出す不面目を考へないわけではありませんが、手一杯に暴れられると、大坪石見いはみの手でこの男を成敗などは思ひも寄りません。
石見いはみの國の高津川に沿うて行つたが、長州の國境に近い山間の小都會に津和野と云ふ町があつて、そこが先生の郷里であつた。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
隠岐おきにももう一度行きたい。そして今度は大満寺山だいまんじやまあたりまで登つて見たい。石見いはみ三瓶さんべに登つて、そこからすつと下りて、断魚渓だんぎよけいに行つて見たい。
行つて見たいところ (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
家臣小笠原備前、河喜多石見いはみ等は門を閉ぢて防戰し、つひに火を放つて切腹した。豐臣方ではこれに懲りて諸大名の夫人を城内に入れることをめた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
石見いはみのや高角山たかつぬやまよりわがそでいもつらむか 〔巻二・一三二〕 柿本人麿
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
五、十三日、小笠原少斎せうさい(秀清)河北石見いはみ(一成)の両人、お台所まで参られ候。
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「平次、何とか相成るまいか、濱路は當家のたつた一と粒種だ。千萬金を積んでも、此石見いはみの命に替へても搜し出さなければならぬ」
遠く石見いはみの國の果まで行つて、山陽線を𢌞つて歸らうかとも考へたりして、そのいづれもが容易でなささうなのに迷つた。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
掴み過ぎるほど掴みましたよ。——殺された妾のお小夜が、池の端で石見いはみ銀山鼠捕りを編笠を冠つた流しの藥賣から買つて居るところを
その時は太田君も一緒で、湖水から吹き入る風の涼しいところで話した。四方山の話の末に、これから私達が向はうとする石見いはみ地方のことが出た。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「佐太郎は砒石ひせきの中毒だ。石見いはみ銀山鼠捕りかなんか、酒へでも入つてゐたのだらう。これは御檢屍を受けなければなるまい」
曾て山陰地方への旅をして、城崎きのさきに近い瀬戸の日和山からも、香住の岡見公園からも、浦富、出雲浦等の海岸からも、あるひは石見いはみ高角山たかつのやまからも日本海を望み見た。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
石見いはみ銀山鼠捕りは、砒石ひせきが入つて居るが、砒石といふものは、恐ろしい毒で、色も味も臭ひもないものだといふことだ。
曾て山陰の旅に出掛けて、石見いはみの國益田にある古い寺院の奧に、雪舟の遺した庭を訪ねたことがあつた。古大家の意匠を前にして、わたしはしばらく旅の時を送つて來た。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
石見いはみ銀山と血染の匕首あひくちを、仙之助の行李かうりに隱したのは、賢いやうでも女の猿智慧さ。あんな事をしたので、いよ/\俺は仙之助が潔白けつぱくだと思つたよ。
石見いはみといふ名が示してゐるやうに、いはばこゝは石の國である。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
味噌汁に仕込んだ、石見いはみ銀山鼠捕りで死んだ死體を調べるより、くはしく、前後の事情を訊く方が大事だつたのです。
今朝の味噌汁に、馬が五六匹殺せる程の石見いはみ銀山が入つてゐましたよ。お勝手をしたのは下女のお六と、あのお夏の二人だが、お六は飯を炊いたり香の物を
お染と米吉は相談をして、主人の永左衞門が飮む筈の、三本目の藥酒の入つた徳利に、石見いはみ銀山鼠捕りを投り込んだのだ。永左衞門はそれを飮んで死んだ。
流しの向うの新しい障子に、妙な穴があるとは思つたが、こんな仕掛けとは今日まで氣が付かなかつたよ——味噌汁みそしる石見いはみ銀山を入れたのも同じ人間の細工だ
慣れた者の眼で見ると、間違ひもなくその苦悶に變つた顏や、皮膚の樣子などから『石見いはみ銀山の鼠捕り』と言はれた砒石劑ひせきざいを呑まされたものに違ひありません。
石見いはみ銀山の鼠取りを酒で呑んで、一緒に死ぬ氣でゐましたがいざとなつて石見銀山が手に入らなかつたので、本郷三丁目の生藥屋で、○○を買つて來て酒に入れ
「御墨附を手に入れるには、大場石見いはみ樣が隱居を遊ばして、御家督を先代樣の御嫡男ごちやくなん、今は別居していらつしやる、大場釆女うねめ樣にお讓りになる外は御座いません」
通るとき、いきなり頭の上へ材木が崩れて來たり、朝の御食事に、石見いはみ銀山鼠取りが入つて居たり——
石見いはみ銀山かな。——お孃さんの味噌汁みそしるにだけ入つて居たところを見ると、たくらんだ仕事だよ、親分」
馬でも殺せるほどの毒藥——石見いはみ銀山鼠捕りといふ、砒石ひせき劑が入つて居り、お關が一と口で氣が付いて主人の椀を取り上げたのは、全く命拾ひといふ外はありません。
昨夜も別のたるで一升持つて行つて、觀世縒くわんぜよりで首を結へた徳利で、別にかんをさせて飮んで居たが、その徳利をり替へて、石見いはみ銀山の入つたのを呑ませた奴があるんです
「あの婆やは石見いはみ銀山で毒害されたんだよ。婆やが寢酒を呑むことを知つて居る人間の仕業だ」
現に叔母のお常があつしに泊つてくれとせがんだ前に、夜中に井戸へ大石を投げ込まれたり、石見いはみ銀山が味噌汁へ入つてゐたり、隨分氣味のよくねえことが續いたさうです
「俺はこの手で妹へ水をブツ掛けさせられた。畜生、殺しても飽足あきたらないのはあの石見いはみだ」
箪笥たんすの中の脇差がそつと取出してあつたり、朝の味噌汁みそしる石見いはみ銀山がブチ込んであつたり、物置の天井にあげて置いたうすが、主人が戸をあけると、いきなり頭の上へ落ちて來たり
すると何んと恐ろしいぢやございませんか、石見いはみ銀山鼠捕りが、ほんの少し、うつかり水を呑んだくらゐでは氣が付かない程入つて居たので御座います。玄庵さんは申しました。
これは恐らく南蠻なんばん物であらう、——ところが、暫らく後で發病した、この家の主人永左衞門殿の呑んだのは、それと全く違つたありきたりの、石見いはみ銀山鼠捕り、つまり砒石ひせきぢや。
「有難うございました。良いことを伺ひました。ところでもう一つ、今朝の味噌汁には石見いはみ銀山鼠捕りが入つてゐたと聽きましたが、中毒したものの樣子はどうでございました」
「冗談ぢやありませんよ。鎌鼬が石見いはみ銀山や手槍を使つてたまるものですか」
いたものを見まして、石見いはみ銀山の鼠捕りの中毒だらうと申します」
それに三日目に娘の部屋から石見いはみ銀山が出たり、血染の袷が出るのも變ぢやないか、——其處で俺は曲者は矢張り外から入つたものと見當をつけ、一と晩母屋おもやに泊つて、小僧達の樣子を見たのさ。
「ところで、あの毒は何んでせう。あつしも隨分いろ/\の毒死は見ましたが、お内儀のやうなのは始めてです。石見いはみ銀山とか鳥兜とりかぶととか、斑猫はんめうとかいふ、ありきたりの毒とは違つたもののやうですが——」
「大場石見いはみ樣の用人、牛込見付外に住んで居ります」
砒石ひせきだよ——石見いはみ銀山鼠取りかも知れない」