矢弾やだま)” の例文
いまや意気のあがりぬいている軍勢であるから、その矢弾やだまといい、喊声かんせいといい、ほとんど、左馬介光春の率いる一千余の兵力の如きは
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
全勝の花冠は我が頭上に在焉あり。敵は見ン事鉄嶺以北に退却した。剣折れ、馬斃れ、矢弾やだまが尽きて、戦の続けられる道理は昔からないのだ。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
防御のない急所を矢弾やだまの雨にさらすようなものかもしれない。その上にまた亮は弱い健康には背負いきれない「生」の望みを背負っていた。
亮の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
除夜の鐘を聞きながら身代あらわれ、せっかくの三年の苦心も水のあわ、さすがの智者も矢弾やだまつづかず、わずか銀一粒で大長者の万屋ぐゎらりと破産。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
南蛮ほおといっている葡萄牙渡来の鉄の面甲には、悪魔でもん、鬼、獅子、狼、鷲など、いろいろの型があり、矢弾やだま掠傷かすりきずから面部を保護するための武具だが
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「そちにとってはふたの姉、君尾の身の上心もとない。駕籠は危険、矢弾やだまのマト。杉窪まではわずか半里。そちも紀州頼宣の娘、勇をして徒歩で行け!」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何はともあれ、彼の身辺へも矢弾やだまが飛んで来たろうし、事態の重大も直感したろう。だが、この胆太きもふとい海外貿易家の若い博多町人は
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「知れたことよ」と出しゃばる左源太、「矢弾やだまが飛びます! 矢弾が飛びます!」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
きのうまで、城壁とほりをへだてて、矢弾やだまを交わして来た敵味方が、いましきいひとすじを間において、こう対坐したのである。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵も味方も居坐ったまま矢弾やだまをポンポン飛ばせるばかりである。
城中からは、守将の三宅藤兵衛以下、数百の兵がいる様子だし、それらの者が、一時、矢弾やだまのあらんかぎり烈しく撃ちつづけて来るからであった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
税を税とは思わなかった。自分たちの安住楽業のためとして、一度の酒を我慢すれば、一尺の国境を守る矢弾やだまになることを、教えられずとも知っていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尾張の大兵をうけて、善戦半月の余、矢弾やだま尽きるの日、勘解由は、炎の中で静かに、夫婦むかいあってさしちがえた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
矢弾やだまは、ともすると、びんの毛をかすってくる。前はうずまく深淵しんえん、ふたりは、進退きわまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と称して、鷹狩と触れてはいたが、その狩衣かりぎぬをかなぐり捨て、その将士の勢子せこ矢弾やだまを命じて
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武士が列伍れつごを組めば、忽ち、火は空を焦がし、矢弾やだまは地をゆるがすのが、この頃のあたりまえだったので、子どもらの眼にも、それはまたなく綺麗に見えたものであろう。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姿を櫓の上からかくすと、忽ちおびただしい矢弾やだまが空に唸った。勤祥はぜひなく立ち戻って
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いじらしいものだ。それはまだ二十歳はたちにも足らぬ旅すがたの女子。矢弾やだまのなかに迷うていたのを、兵に申しつけて、八幡原の社家のうちにかぼうておいたぞ。はやく戻って、無事を
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「弓組、鉄砲組をひきつれて、あの大屋根へのぼらせ、城内へ矢弾やだまを撃ちこめ」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう矢弾やだまも来ない。まさに城兵は逼塞ひっそくしたとみえる。光秀はかたわらを顧みて
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「敵国なれど、近くまで出陣して参ったものを、お眼にもかからず、矢弾やだまを師のわすさとへ射ち込むのは、師弟の情、忍び難いここちがいたすので、これから御挨拶をしに行こうと存ずる」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして無性に、光春の姿の消えたあたりに向って、矢弾やだま盲射もうしゃし出した。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄の細川与一郎(忠興ただおき)は、総がかりとなるや、味方のまっ先に本丸へ斬り入り、弟の頓五郎とみごろう興元おきもと)も、兄に負けじと、躍りこんで、兄弟、矢弾やだまの中に奮戦して、松永久秀の旗本三人までを
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでにかてもなく矢弾やだまもない。関羽はついに涙をのんで王甫に別れた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あたかも矢弾やだまの弱さをあざけっているようだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
矢弾やだまを消費するまでもない
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)