眼眸がんぼう)” の例文
「誓って、祖国のために!」椋島技師は、燃えるような眼眸がんぼうを大臣の方に向けて立ちあがると、こう叫んで、右手をつとのばした。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
醜と美とをわかつは、必らずしも其形象に関はるにあらざるなり。形躰にあらはれたる醜美を断ずるは、独り眼眸がんぼうのみ。眼眸は未だ以て醜美を断ずる唯一の判官となすべきにあらず。
万物の声と詩人 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
てんいまだくらし。東方とうはう臥龍山ぐわりうざんいたゞきすこしくしらみて、旭日きよくじつ一帶いつたいこうてうせり。昧爽まいさうきよく、しんみて、街衢がいく縱横じうわう地平線ちへいせんみな眼眸がんぼううちにあり。しかして國主こくしゆ掌中しやうちうたみ十萬じふまんいまはたなにをなしつゝあるか。
鉄槌の音 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やがて杜の方に向ってきりのように鋭い嫌悪けんお眼眸がんぼうを強く射かけると、長い腕をまわして、ミチミの身体を自分のたくましい肩の方へ引きよせ、そしてグッと抱きしめた。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)