)” の例文
それから、「われこそさめ御思みおもひよりは」の句は、情緒こまやかで、且つおのずから女性の口吻こうふんが出ているところに注意せねばならない。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
女にしてみると、こうして見出されるよりは、いままでのように誰にも気づかれずに婢としてはかなく埋もれていた方がどんなにしか知れなかった。……
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
前司の父も受領ずりやうとは申せ、近い上達部かんだちめの子でもございますから、お会ひになつては如何いかがでございませう? かやうに心細い暮しをなさいますよりも、少しはしかと存じますが。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
天道はみつるをきて謙にし、地道は盈るを変へて謙にながし、鬼神は盈るを害して謙にさいはひし、人道は盈るを悪みて謙を好む。謙は尊くして光り、いやしくしてゆべからず。君子の終りなり。
地山謙 (新字旧仮名) / 片山広子(著)
その頃まで邦産なしと心得輸入品を用いおったが、ようやく右の地で捜し出たらしく、古人苦辛のほど察すべし。このへたばかりけばかざしきも、衆香にまじえて焼かば芳をし合香に必須だ。
奮闘の気はいやしに
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
一首の意は、あなたよ、もう私は死んでしまう方がしです、あなたを恋すれば日は日じゅう夜は夜じゅう心の休まることはありませぬ、というので、女が男にうったえたおもむきの歌である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
秋山あきやましたがくりみづわれこそさめ御思みおもひよりは 〔巻二・九二〕 鏡王女
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)