白珠しらたま)” の例文
「むすめは、わが命につぐものだ。戦のちまたはおろか、世の寒風にもあてたことのない白珠しらたまだ。よし、おれ自身、淮南の境まで守ってやろう」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菊池寛きくちかんの『不壊ふえ白珠しらたま』のうちで「媚態」という表題の下に次の描写がある。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
紙の細工もたまに替って、葉の青いのは、翡翠ひすい琅玕ろうかん花片はなびらの紅白は、真玉まだま白珠しらたま、紅宝玉。燃ゆるも、またたきながら消えない星でございます。御覧遊ばせ、貴女。お召ものが濡れましたか。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
激浪おほなみたちて白珠しらたま
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
神代には、酒を造る時、純清の処女子おとめごたちの白珠しらたまのような歯でよねを噛ませて酒をかもしたという。それほど清らかなものだった
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とまれ袈裟の死は、上下を通じ、女性の心には必ずかくされてある白珠しらたまのようなその本質へ、真実をもって、何か、ささやいていたことはたしかであった。
綿と錦繍につつまれた白珠しらたまの如き十四の処女おとめはこうして父に負われて城を立つ時から、もう半ば失神していた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白珠しらたままごう金蓮の歯がみこぼれる。眼いッぱいな愛嬌というか一種蠱惑こわくなもの、これが自分のあによめだろうか。これが兄の妻なのか。武松にはまだ身にみてこない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まばゆげに、それを見て、新妻の玉日も、白珠しらたまのような歯を、ちらと見せて、ほほ笑んだ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松虫は、ほの紅くなった顔に、白珠しらたまのような汗をながして、道のささの根につかまった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえ白珠しらたまのようにおののきやすく、感じやすく、無碍むげなる人の手を恐れるものにしろ、それを女性の一生を通じて、ある期間だけにある、最高な心情の美であるとか、尊いものであるとかで
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あたりの樹々は、露がこおって、白珠しらたまをつらねたように氷が咲いていた。大地は、針の山に似ている冱寒ごかんの深夜だった。けれど、四人の若人わこうどの息は、血は、さながら火と火のように熱かった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まぶたのなかの白珠しらたまに、正月二日の陽がきらきらしていた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、白珠しらたまのような歯を、ちらと、笑みこぼして見せた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)