だま)” の例文
その桟橋の両側には三そうばかりの船が着いている。きに途中で追い抜いた木浦もっぽ丸もおくれてはいって来る。船全体が明るくともって、水晶だまのようなのが一艘おる。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
渡舟わたし待ちの前から、こう話しかけてきた中年増ちゅうどしまがある。身装みなりは地味、世帯やつれの影もあるが、腰をかがめた時下げた髪に、珊瑚さんごの五分だまが目につくほどないい土佐とさだった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真事まことを相手にビーだまを転がしていた小林がぬすむようにしてこっちを見た。叔母も津田も一度に黙ってしまった。叔父はついに調停者の態度で口を開かなければならなくなった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むかしふうのガラスだまのかんざしより、いくら、がきいているかしれませんよ。
お母さんのかんざし (新字新仮名) / 小川未明(著)
中へ入って畳の上へ足を投げ出すと共に脚絆きゃはんをほぐしかけると、行燈あんどんをかき立てて、そこへ、しどけない上にしどけない寝巻姿の淫婦お蘭が、くの字になって現われ、五分だまの銀のかんざしで
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
母親ははおやは、まえにきた行商人ぎょうしょうにんが、ガラスだまだといったことをおぼえていたので、つまらないしなとよいしなえるなら、たとえ形見かたみであろうともゆるしてもらえるようながして、そのおとこきんのかんざしと
お母さんのかんざし (新字新仮名) / 小川未明(著)
その頃流行った珊瑚さんごの五分だま金脚きんあしとかいう物だったろう。小橋の上から覗いてみると、それは久保山から流れてくる早い水勢で、ちょっと深い。かんざしは、底の方にキラキラ透いて見えている。