焚落たきおと)” の例文
生温なまぬるちやをがぶ/″\とつて、ぢいがはさみしてくれる焚落たきおとしで、つゞけに煙草たばこんで、おほい人心地ひとごこちいた元二げんじ
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私は鼻をすすりながら、焚落たきおとしの火を十能に取って炉へ運びましても、奥様は未だ御目覚が無い。熱湯にえゆで雑巾をしぼりまして、御二階を済ましても、まだ御起きなさらない。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ばあさんは、七輪しちりん焚落たきおとしを持っていらっしゃる、こちらへと、使者を火鉢に坐らせて、近常さんが向直って
赤い釣洋燈つりランプの光はションボリと家の内を照していた。台所の方では火が燃えた。やがてお倉は焚落たきおとしを十能に取って、長火鉢の方へ運んだ。そのうちにお延やお鶴も起きて来た。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
色の黒い小女こおんなが、やがてうるし禿げたやうななりで、金盥かなだらいを附けたらうと思ふ、おおき十能じゅうのうに、焚落たきおとしを、ぐわん、とつたのと、片手にすすけた行燈あんどう点灯ともしたのを提げて
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そこに焚落たきおとした篝火かがりび残余なごりである。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)