まね)” の例文
旧字:
宮はうつむきて唇を咬みぬ。母は聞かざるまねして、折しもけるうぐひすうかがへり。貫一はこのていを見て更に嗤笑あざわらひつ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
されど人の世の海に万波の起伏を詳にせむとして、仍且つ茫洋の嘆あらむとこそすれ、近く磯頭を劃りて一波の毎に砕くるには、強ても知らざるをまねす。
抒情詩に就て (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
子、やまいはなはだし。子路(葬るに大夫の礼を備えんと欲し)門人を臣たらしむ。病ひまあるとき、曰く、久しいかな、由のいつわりを行なえる。臣なきに臣有るまねしてわれ誰をか欺かん。天を欺かんか。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
そこな痴人しれびと、知らぬまねして聞いてあれば片腹いたい妄言綺語まうごんきご
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
猶答へざりけるを、軽く肩のあたりうごかせば、貫一はさるをも知らざるまねはしかねて、始めて目を開きぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かたへの墻より高粱の殻一本を抽きて、これを横たへて、帯を解きてその上に掛け、かうべを引いてくびるるまねしたり。少婦はこの状を見て、果して哂ふ。なかまのものも亦うちはやしぬ。婦去りて既に遠くなりぬ。
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
貫一は聞かざるまねして莨をくゆらしゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)