滅切めつき)” の例文
年を取ると滅切めつきり氣が弱くなつて、若い時にひどい眼に逢はせた奴が、つゞみを鳴らして仕返しに來さうで、どうも、夜もオチオチ眠られない
新聞社と雑誌社から頼まれて夜分遅くまで投書の和歌を添削する所から其の安眠不足などの所為せゐで、近年滅切めつき身体からだが痩せこけて顔色も青褪あをざめて居る。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
つぎにはそらいさゝか微粒物びりふぶつとゞめないといつたやうにすごほどれて、やま滅切めつきちかつてた。しつとりと落付おちついた空氣くうきとほして、日光につくわうめう肌膚はだむやうにあたゝかであつかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
案排あんばいに、元気が滅切めつきりよくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
駒吉といふのは、まだ五十そこ/\でせうが、怪我をしてから滅切めつきり年を取つて、半分は寢て居るらしく、見たところ六十近いやうな、一と握りほどの中老人です。
生涯を物慾にゆだね切つて、隨分無理な金を溜めた爲に散々諸人のうらみを買つたらしく、先年女房に死に別れ、放埒はうらつな伜を勘當して、娘のお喜多一人を頼りに暮すやうになつてからは滅切めつきり氣が弱くなり