浅間せんげん)” の例文
旧字:淺間
一度ひとたび静岡の地を踏んで、それを知らない者のない、浅間せんげんの森の咲耶姫さくやひめに対した、草深の此花このはなや、にこそ、とうなずかるる。河野一族随一のえん
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
扶桑講を講中としているところの、富士崇拝教の本殿である。講中でこそないが、私も富士崇拝者の一人として、黙礼をして、浅間せんげん本社へと足を運んだ。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
この老人は富士浅間せんげん流という一派を開いた人で、試合の見分けんぶんには熟練家の誉れを得ている人でありました。
不思議なことには富士の山でまつる神を、以前から浅間大神ととなえておりました。富士の競争者の筑波山の頂上にも、どういうわけでか浅間せんげん様が祀ってあります。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
住居は浅間せんげん神社の西で、井宮という処だと云った。駿府城の外曲輪そとくるわをまわり、武家屋敷の裏をぬけてゆくと、まもなく向うに賤機山しずはたやまの緑がけぶるように見えてきた。
雨の山吹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
……ああそうだ、いいことがある、焼き討ちを掛けながらこう云おう、浅間せんげんの社地で宗三郎さん、太郎丸の一味に囲まれている! あぶないあぶない、あぶない! とね!
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
富士山の浅間せんげん神、白山の白山比咩しらやまひめ神、立山の雄山おやま神、伯耆大山の大山おおやま神、阿蘇山の阿蘇比咩神、鶴見岳の火男神・火売神・陸中駒ヶ岳の駒形神、磐梯山の石椅いわはし神、月山の月山神
山の今昔 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
今、彼の眠っている小さいほこらひさしには、浅間せんげん神社という額が見える。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
賤機山しずはたやま浅間せんげん吹降ふきおろす風の強い、寒い日で。寂しい屋敷町を抜けたり、大川おおかわ堤防どてを伝ったりして阿部川の橋のたもとへ出て、くるまは一軒の餅屋へ入った。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
池は浅間せんげん大社のうしろの熔岩塊、神立山の麓から噴き出る水がたたえたもので、社の神橋の下をすみ切って流れる水は、夜目にも冷徹して、水底の細石までが、うろこが生えて、魚に化けそうだ。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
主脈から西南に延びた一支に高さ百五十米の浅間せんげん山がある。
山と村 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「ここは人目にかかります、そうですねえ、浅間せんげんの社地で」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
仰いで、浅間せんげんの森の流るるを見、して、ほりの水の走るを見た。たちまち一朶いちだくれないの雲あり、夢のごとくまなこを遮る。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところで一体、富士の神を浅間せんげんと呼ぶのは、どうしたわけであろうか。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
浅間せんげんやしろで、かまで甘酒を売る茶店へ休んだ時、鳩と一所いっしょ日南ひなたぼっこをする婆さんに、阿部川あべかわ川原かわらで、桜の頃は土地の人が、毛氈に重詰じゅうづめもので、花の酒宴さかもりをする、と言うのを聞いた。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)