やす)” の例文
自分たちの出る事が、百姓万民の幸福となり、朝廷のご宸襟しんきんをもやすんじ奉る唯一の道であると固く正義づけての上の信念であった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すべての順序を逆にして、考えて行って御覧なさい。地天泰ちてんたいという卦になって一切がやすらかに解決されてゆきます
夫人探索 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
またゝに、かり炭燒すみやきほふられたが、民子たみこ微傷かすりきずけないで、まつたたまやすらかにゆきはだへなはからけた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
翁は、螺の腹にえび蔓の背をしたまま旅のかれいいを背負い、杖を手にして東路に向った。妻は早く死に、陽のさす暖い山ふところの香高い橘の木の根方にやすらかに葬ってある。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それはこの上ちようもない世の底に身を置くやすらかさと現実離れのした高貴性に魂を提げられる思いとが一つに中和していた。これをびとでもいうのかしらんと鼈四郎は考える。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
今や樊川はんせんの曹仁が、駸々しんしんと堺に迫りつつある事態を告げ、出でてこれを迎撃し、さらに敵の牙城がじょう樊川を奪り、もって、蜀漢の前衛基地としてこの荊州を万代のやすきにおかねばならないと演説した。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
またこの刑部には、秀頼公は心底にわすが、徳川内府などに、追従ついしょうは持たぬ。——ただ、秀頼公おすこやかに、一日もはやく、御成人あれと祈るのみじゃ。その間は、世もやすかれと祈るのみじゃ。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)