没落ぼつらく)” の例文
旧字:沒落
民さんはそのころの仲間である名士の子供を二三言った。生家は没落ぼつらくして、今では妹の嫁ぎ先きが池袋で果物屋をしているのがあるきりだという。
石ころ路 (新字新仮名) / 田畑修一郎(著)
寺男の話では鵙屋の家はとうに没落ぼつらくしてしまい近年はまれに一族の者がお参りに来るだけであるがそれも琴女の墓を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
三代目だったから、もう命数が尽きていたのだろう。銀さんは親父さんの店に勤めていたが、没落ぼつらくしたから仕方がない。今更余所よそへ就職口はむずかしい。
心のアンテナ (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今日きょうは九月二十七日、城山没落ぼつらくは三十三年前の再昨日さいさくじつであった。塩田君はやおら琵琶をかかえ、眼を半眼はんがんに開いて、がい一咳。外は天幕総出で立聞く気はい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
怯えてわが家没落ぼつらくの必至の感を深くするほど、不思議とかえって、その猛威がなつかしくなって来た。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
よく廿にぢう三年の七月になると、妄執まうしうれずして、又々また/\江戸紫えどむらさきふのを出した、これが九号の難関なんくわんへたかと思へば、あはれむべし、としくれ十二号にして、また没落ぼつらく
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そういつまでもおこってるのはやぼだぜ。呂宋兵衛るそんべえ没落ぼつらくするし、人穴城ひとあなじょう住人じゅうにんでもなくなってみれば、おまえとおれはなんの仇でもありゃしねえ。久しぶりで仲よく話でもしようじゃねえか
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おきんの亭主ていしゅはかつて北浜きたはまで羽振りが良くおきんを落籍ひかして死んだ女房の後釜にえた途端に没落ぼつらくしたが、おきんは現在のヤトナ周旋屋、亭主ははじをしのんで北浜の取引所へ書記に雇われて
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
没落ぼつらくだね。するとこの国にかわって敵国がいばりだすわけかな」
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)