気不味きまず)” の例文
旧字:氣不味
「おい!」と造酒は気不味きまずそうに、「親切でった友達のしわざを、そうまで悪い方へ取らないでも、よかりそうなものに思われるがな」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「云い出すなら御米の寝ている今である。今ならどんな気不味きまずいことを双方で言いつのったって、御米の神経に障る気遣きづかいはない」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「イヤ何ともおっしゃりはしないが、アレ以来始終気不味きまずい顔ばかりしていて打解けては下さらんシ……それに……それに……」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そして、その気不味きまずい雰囲気に、拍車を加えるのは、京子のドアーが開くたびに、ちらりと送る素早い視線だった。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
またしても気不味きまずいものゝ出来たといううわさがらくになるすこしまえ楽屋の一部にしきりに行われたのである……をそれとなくさぐってみたい肚だった。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
居残った私達三人の間には、妙に気不味きまずい沈黙がやって来た。が、まもなく夫人は、なにか意を決したように顔をあげると、訴えるような様子で私達へ云った。
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
多少の気不味きまずさをも顧みずに尋ねて行ったり、子供達の話しで原っぱと云われている、近所にあるが彼女がまだ一度も行って見ない荒れた屋敷跡へ出て見たりして
不幸 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
すなわち生麦で英人のリチヤードソンと云うものを薩摩のさむらいきったと云うことが丁度ちょうど彼方あっちに報告になった時で、サア仏蘭西のナポレオン政府が吾々われわれ日本人に対して気不味きまずくなって来た。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
二人の間にはこれといって、気不味きまずいこともなかったのに別れ話を切り出され、しかも理由は訊くなという。ちょっと廻り気も起ころうってものさ
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼女の口にするところはおもに彼ら夫婦間に横たわる気不味きまずさの閃電せんでんに過ぎなかった。そうして気不味さの近因についてはついに一言ひとことも口にしなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「もし不都合があったら、私からとくと云って聞かせるから、遠慮しないで、何でも話しておくれ。御互のなかで気不味きまずい事があっちゃあ面白くないから」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
語り合ったが、同じ松の花の咲く季節の、今年の春には同じ森で、気不味きまずい別離を告げようとは……何だか俺には夢のようだ。化かされているような気持もする
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そういわれるたび気不味きまずい顔をした。ある時は自分を理解しない細君をしんから忌々いまいましく思った。ある時はしかり付けた。またある時は頭ごなしにり込めた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「さて、どうしたものだろうな。思い切って打ち込むかとにかく相手は代稽古、俺に負けては気不味きまずかろう。と云ってこっちも負けられない。ええ構うものかひっぱたいてやれ。エイ!」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
僕はまださいを貰った経験がないから、そう云う事を口にする資格はないかも知れないが、いかな仲のい夫婦でも、時々は気不味きまずい思をしあうのが人間の常だろうから
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「お花か‼」と義哉は気不味きまずそうに云った。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
宗助そうすけ御米およねとは仲の好い夫婦に違なかった。いっしょになってから今日こんにちまで六年ほどの長い月日を、まだ半日も気不味きまずく暮した事はなかった。言逆いさかいに顔を赤らめ合ったためしはなおなかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
造酒は気不味きまずい顔をした。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
代助は少しでも気不味きまずい様子を見せて、この上にも、女の優しい血潮を動かすに堪えなかった。同時に、わざと向うの意を迎える様な言葉を掛けて、相手を殊更ことさらに気の毒がらせる結果を避けた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)