毛臑けずね)” の例文
つまを掴んでたくし上げた。だらーッと下がった緋の長襦袢の、合わせ目が開いて女のはぎとは見えない、細っこい毛臑けずねがニョッキリ出た。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
猪口ちよく一箇を置いた塗りの剥げた茶餉台ちやぶだいの前に、ふんどし一つの真つ裸のまゝ仰向けに寝ころび、骨と皮にせ細つた毛臑けずねの上に片つ方の毛臑を載せて
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
商賈しょうこも出た負販ふはんの徒も出た。人の横面そっぽう打曲はりまげるが主義で、身を忘れ家を忘れて拘留のはずかしめいそうな毛臑けずね暴出さらけだしの政治家も出た。猫も出た杓子しゃくしも出た。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
膝が、やっと隠れるくらいで、毛臑けずねが無残に露出している。ゴルフパンツのようである。私は流石さすがに苦笑した。
乞食学生 (新字新仮名) / 太宰治(著)
身には殆ど断々きれ/″\になつた白地の浴衣ゆかたを着、髪をおどろのやうに振乱し、恐しい毛臑けずねを頓着せずにあらはして居るが、これがすなはち自分の始めて見た藤田重右衛門で、その眼をいからした赤い顔には
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
さういつたやうな稼ぎ人や無頼漢ごろつきどもが、道の出合ひがしらにこの頭でつかちを見て、小生意気にもいきなり飛びついてみたり、また細つこい毛臑けずねでもつて力一杯蹴飛ばしてみたりするが
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
女では無いのだ。どこかに男の「精神」が在る。ところが女は、かえってその不自然な女装の姿にあこがれて、その毛臑けずねの女性の真似をしている。滑稽の極である。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
半襦絆はんじゅばん馬乗袴うまのりばかま、それに縫紋の夏羽織という姿もあり、すそから綿のはみ出たどてらを尻端折しりばしょりして毛臑けずね丸出しという姿もあり、ひとりとしてまともな服装の者は無かったが
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
馬場は部屋の隅の机に頬杖ほおづえついて居汚く坐り、また太宰という男は馬場と対角線をなして向きあったもう一方の隅の壁に背をもたせ細長い両の毛臑けずねを前へ投げだして坐り
ダス・ゲマイネ (新字新仮名) / 太宰治(著)
そこにモオパスサンの毅然きぜんたる男性が在る。男は、女になれるものではない。女装することは、できる。これは、皆やっている。ドストエフスキイなど、毛臑けずねまるだしの女装で、大真面目である。
女人創造 (新字新仮名) / 太宰治(著)