櫓櫂ろかい)” の例文
声を張った、扇拍子、畳を軽くちながら、「筑紫下りの西国船、ともに八ちょうに八挺、十六挺の櫓櫂ろかいを立てて……」
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、世帯道具のがらくた物を一ト舟に乗せ、またお手のものの櫓櫂ろかいをもって、さっそく家を、そこからさらに遠い湖上のの一軒家へ移してしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
アトは見張りの若い者か何か一人残って、櫓櫂ろかいを引上げてそこいらの縄暖簾なわのれんに飲みげに行きます。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
次第に嵐は吹き募り、それに連れて浪が高まり、間もなく櫓櫂ろかいが役に立たなくなった。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
叫ぼうにも陸に声の届こうはずはなし、元来この筏なるものは、おか真近につないで紳士淑女の飛び込みならびに休憩の用に供するために造られたものゆえ、櫓櫂ろかいも帆もあろうはずはない
三人とも心付いて見ると、櫓櫂ろかいも皆吹流されてしまいました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
伝馬船組は、櫓櫂ろかいをそろえて、元気よく出発した。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
すべりかかつた櫓櫂ろかいが波をくすぐる
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いま櫓櫂ろかいおとを絶え
浮名 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
孔明の従えてきた荊州の舟手の兵は、みな商人あきゅうどに姿を変えていた。玄徳と夫人、また随員五百を各〻の舟に収容すると、たちまち、櫓櫂ろかいをあやつり、帆を揚げて、入江の湾口を離れた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
這奴しゃつ横紙を破っても、縦に舟を漕ぐ事能わず、あまつさ櫓櫂ろかいもない。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一人で櫓櫂ろかいあやつって紫錦は湖水を引き返した。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
表面は夜凪よなぎのとおり無事平穏に天神岸からともづなを解いた二百石船——淀の水勢に押されて川口までは櫓櫂ろかいなしだが、難波なにわ橋をくぐり堂島川どうじまがわを下って、いよいよ阿州屋敷の女松めまつ男松おまつ
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
櫓櫂ろかいだけの兵船も多いが、身うごきの重い大船はみな帆力ほぢからを借りていた。とかく船列は一致しない。何しろ、お座船からの命令一下では、ただちに敵前上陸へ移る将士をどれも満載している。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)