楊柳やなぎ)” の例文
で、初めは楊柳やなぎで作りましたが、後にはいろ/\の貴い材料で作り、繼弓つぎゆみにして金爛きんらんの袋などに入れて持つて歩くやうになりました。
俥が橋を渡り尽すと、路は少し低くなつて、繁つた楊柳やなぎの間から、新しい吉野の麦藁帽が見える。橋はその時まで、少し揺れてゐた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ふなべりに触れてつぶやくやうに動揺する波の音、是方こちらで思つたやうに聞える眠たい櫓のひゞき——あゝ静かな水の上だ。荒寥くわうれうとした岸の楊柳やなぎもところ/″\。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
後日、浪子燕青は、この淫婦姦夫の身柄を貰って、水寨すいさいほとりへ連れて行き、楊柳やなぎの幹にしばり付けたふたりを、短刀のただ一ト突きのもとに成敗した。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはまるで坂口の知らない光景であった。青々と伸びた楊柳やなぎの葉がくれに、白く塗った洋館が見えてきた。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
果して半畝位の庭があって、細かな草が毛氈もうせんを敷いたように生え、そこのこみちには楊柳やなぎの花が米粒をいたように散っていた。そこに草葺くさぶきの三本柱のあずまやがあって、花の木が枝を交えていた。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
鬱蒼こんもり楊柳やなぎかがやくまさびしき遠き入江に日の移るなり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
よるも楊柳やなぎの木影にうち伏し
神に捧ぐる歌 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
俥が橋を渡り盡すと、路は少し低くなつて、繁つた楊柳やなぎの間から、新らしい吉野の麥藁帽が見える。橋はその時まで、少しれてゐた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
矢は二本共楊柳やなぎの枝で造つた本格のもの、どんな急所を射たところで、人の命などを奪れさうな代物ではありませんが。
銭形平次捕物控:315 毒矢 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
楊柳やなぎの蔭には、小博奕こばくちに群れているのやら、寝ている者、欠伸あくびしている者、さまざまだった。漁船の舟かずは百隻をこえようか、それがみんな岸に繋いである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千曲川の水は黄緑の色に濁つて、声も無く流れて遠い海の方へ——其岸にうづくまるやうな低い楊柳やなぎの枯々となつた光景さま——あゝ、依然としてもとの通りな山河の眺望は、一層丑松の目をいたましめた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
南岸は崖になつてゐるが、北の岸は低く河原になつて、楊柳やなぎが密生してゐる。水近い礫の間には可憐な撫子なでしこが處々に咲いた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そのあたりは、七条坊門やら、塩小路、楊柳やなぎ小路などの細かい人家が櫛比しっぴしている所だったが、焼けたのは、六波羅勤ろくはらづとめの侍屋敷一軒だった。金田鳥羽蔵正武の屋敷だった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
言うまでもなくこれは寸法二尺八寸の極めて小さい弓で、初めは楊柳やなぎで作りましたが、後にはいろいろの貴い材料で作り、継弓つぎゆみにして金爛きんらんの袋などに入れて持って歩くようになりました。
南岸みなみぎしは崖になつてゐるが、北の岸は低く河原になつて、楊柳やなぎが密生してゐる。水近いこいしの間には可憐いたいけ撫子なでしこが処々に咲いた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼は、馬を降りて、水辺の楊柳やなぎにつなぎ、一基の石を河原の小高い土にすえて、牛を斬り、馬をほふった。そして典韋の魂魄こんぱくをまねくのまつりをいとなみ、その前に礼拝して、ついには声を放っていた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)