枳殼からたち)” の例文
新字:枳殻
葉の尖つたひゝらぎ、暗い杉、巴丹杏はたんきやうなどが其邊に茂つて居まして、木戸の横手にある石垣の隅には見上げるほど高い枳殼からたちが立つて居ました。
ソーンフィールドも好きです、その古風こふう閑寂かんじやくさ、古い、からすの木や枳殼からたちの木、灰色の建物たてものの正面、また鋼鐵色の空をうつす暗い窓の線などもね。
さしもに咲き栄えたいにしえの文の苑も、まわりの垣根が枳殼からたちでは話にならない。古い国だと自慢はして居るものの、古人を友とする方法は断ち切られようとして居る。
書物を愛する道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
或る曲り角で、向うから駈けてきた俥を避ける拍子に、枳殼からたちの生籬の刺で、彼は手の甲を少し傷つけた。血のにじんだ所へ唾をつけると、ひりひりと痛んだ。それが妙に快い気持だった。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
枳殼からたちかき恨みしか
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
枳殼からたちの庭
短歌集 日まはり (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
とうさんが蝶々てふ/\をめがけて竹竿たけざをたびに、それが枳殼からたちえだつて、あをがバラ/\ちました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なんなしにとうさんはその蝶々てふ/\おとすつもりで、木戸きどうちはうからなが竹竿たけざをさがしてました。ほら、枳殼からたちといふやつは、あのとほりトゲのた、えだんだでせう。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おほきな蝶々てふ/\だけが氣味きみわるくろはねをひろげて、枳殼からたちのまはりをんでました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)