束脩そくしゅう)” の例文
平田家では、彼の名を誓詞帳(平田門人の台帳)に書き入れ、先師没後の門人となったと心得よと言って、束脩そくしゅうも篤胤大人うしの霊前に供えた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
或日周禎は嗣子周策を連れて渋江氏をい、束脩そくしゅうを納めて周策を保の門人とせんことを請うた。周策はすでに二十九歳、保はわずかに十七歳である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
平次は用意の束脩そくしゅうを二人分、お盆を借りて差出し、その日は四方八方よもやまの話だけで帰りました。戸口を出るともう
「かりそめにも束脩そくしゅうをおさめて教えを乞うて来たからには、私はその人をなまけさしてはおかない。」
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
竹内写真館主の話によると、その松下と名乗る男は早速束脩そくしゅうを納めて門下に加わったのだった。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
わたくしは先考の故紙中に束脩そくしゅう二分月謝一分を枕山に贈ったことの記録せられているのを見た。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その年末のことであるが、和次郎が(束脩そくしゅうを持って)磯野へ挨拶にいったところ、萬女史はよろこんで座敷へあげ、案じていたのとは反対に、若尾のことをしきりに褒めた。
みずぐるま (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
大名の子一人、林家りんけの塾へやっても、巻絹の一台ぐらいは、束脩そくしゅうに持たせてやる。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
束脩そくしゅうもおさめたやら、どうやら、福島の人で、あたしたち姉妹を可愛がってくれた、あまり裕福でない、出入りの夫婦にたのんで、榛原はいばらで買った短冊に、しのぶ摺りを摺ってもらいにやって
この理法は無我無欲であるから、別に入門料や束脩そくしゅうの心配はいりませぬ。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「父親から仕送りが来るんだよ、束脩そくしゅうや月謝なんかあてにするものか」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その上に新書生が入門するとき先生束脩そくしゅうを納めて同時に塾長へもきん貳朱にしゅを[#「貳朱を」は底本では「※朱を」]ていすと規則があるから、一箇月に入門生が三人あれば塾長には一分いちぶ二朱の収入
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「不意に来たからって怪しい人間じゃねエ。神田の八五郎という者だ。束脩そくしゅうはいくらだえ。——樽代たるだいとか何とかあるなら、そう言ってくれ。はばかりながら——」
銭形平次捕物控:124 唖娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
生徒入学の時には束脩そくしゅうを納めて、教授する人を先生とあおたてまつり、入学の後も盆暮ぼんくれ両度ぐらいに生徒銘々めいめいの分に応じて金子きんすなり品物なり熨斗のしを附けて先生に進上する習わしでありしが、私共の考えに
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
束脩そくしゅうとしての包金、上に、金千疋と書いたのをさし出すと
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それは不思議でないにしても、弟子は一人残らず他所よその者で、町内の若い者が束脩そくしゅうを持って頼みに行くと、家が狭いとか、ひまがないとか、何とかかとか言って追っ払われる」