本丸ほんまる)” の例文
加州かしゅう石川ごおり金沢城の城主、前田斉広なりひろは、参覲中さんきんちゅう、江戸城の本丸ほんまる登城とじょうする毎に、必ず愛用の煙管きせるを持って行った。
煙管 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
で、いまではこの安土城あづちじょうのあとへ、信長のぶなが嫡孫ちゃくそん、三法師ぼうしまる清洲きよすからうつされてきて、焼けのこりの本丸ほんまるを修理し、故右大臣家こうだいじんけ跡目あとめをうけついでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は責任を知る晁錯ちょうそなり、無学なる(比較的に)王安石おうあんせきなり。彼は文化十二年寺社奉行となり、爾来じらい大坂城代じょうだいとなり、京都所司代しょしだいとなり、西丸にしのまる老中となり、遂に天保五年本丸ほんまる老中となる。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
黄玉色トパアズいろ薔薇ばらの花、忘れられてゆく傳説の姫君、黄玉色トパアズいろ薔薇ばらの花、おまへの城塞じやうさいは旅館となり、おまへの本丸ほんまるは滅んでゆく、おまへの白い手は曖昧な手振をする、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ばらばらと櫓梯子やぐらばしごりると、ふたりは文字もんじ奥郭おくぐるわ内部ないぶへはいった。そして、岩壁がんぺき洞窟どうくつ利用りようしててられてある、とりでの本丸ほんまるのなかへ走りこんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本丸ほんまるとは、城主のすまうところである。築山つきやまの松、たきをたたえたいずみ鶺鴒せきれいがあそんでいる飛石など、いくさのない日は、平和の光がみちあふれている。そこは浜松城のみどりにつつまれていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)