あた)” の例文
があたつてあたたかさうな、あかる腰障子こししやうじうちに、前刻さつきからしづかにみづ掻𢌞かきまは氣勢けはひがしてたが、ばつたりといつて、下駄げたおと
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「お寒う御座います。どうぞおあたり下さいませ。」母子おやこは靜かに水のたれる音を耳にしながら火鉢によつた。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
夜を徹して予が病躯びょうくあたためつつある真最中なりしなり、さて予は我に還るや、にわかにまた呼吸の逼迫ひっぱく凍傷とうしょうなやみ、眼球の激痛げきつう等を覚えたり、勿論もちろんいまだまなこを開くことあたわざるのみならず
部屋が氣に入らなくて、吾儕われ/\は帳場の上にある二階の一間に引越したが、そこでも受持の女中に頼んで長火鉢の火をドツサリ入れて貰つて、その周圍へ集つてあたつた。何となく氣は沈着おちつかなかつた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
だから、二階の梯子はしごはとりはらわれて、あたしたちのあたっている頭の上を、猿梯子さるばしごをかけて登ってゆく、物干場は、一度窓から出て、他家よその屋根に乗り、そして自分の家の大屋根にゆく仕かけだった。
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)