改刪かいさん)” の例文
本文中二箇所の字句を改刪かいさんしてある。これは諷刺の意を誤解せられては差支えるので、故意に原文に従わなかったのである。誤訳ではない。
(新字新仮名) / オシップ・ディモフ(著)
三、文中加特力カトリツク教の語多し。印刷成れる後、我國公教會の定譯あるを知りぬ。而れども遂に改刪かいさんすること能はず。
これに増補改刪かいさん推敲すいこうを加えているうちにまた数年がたった。史記しき百三十巻、五十二万六千五百字が完成したのは、すでに武帝ぶてい崩御ほうぎょに近いころであった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
其後に至りて所謂拮据きつきよ二十余年改刪かいさん補正幾回か稿を改めしは固より疑ふべからずと雖も筆を落すの始より筆を
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
此等の人々の談話、書牘しよとく、その所蔵の文書等に由つて、わたくしは上の一篇の中なる人名等に多少の改刪かいさんを加へた。比較的正確だと認めたものを取つたのである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そして、「万葉集はその原本のままに伝はり、改刪かいさんを経ざるものなるを思ふべし」(講義)を顧慮すると、目録の方の「御」は目録作製の時につけたものとも取れる。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
某博士かが「プロフェッサース」を「ポリチシアンス」に改刪かいさんしたので大笑となったことがある。
竹渓は家にとどまり、座右の手函てばこおさめた詩草を取出してこれを改刪かいさんしやや意に満ちたものおよそ一百首をえらみ、書斎の床の間に壇を設けて陶淵明とうえんめいの集と、自選の詩とを祭った。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかもそれが舞台に実演されたものは、依田学海よだがっかい居士の「文覚勧進帳もんがくかんじんちょう」その他二、三に過ぎず、それすらもいろいろの訂正改刪かいさんを加えられて原作者の不満を買うような結果になった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
英人の論説を剽竊ひょうせつ改刪かいさんして次々新聞紙上に発表したが、いずれも非常な反響を呼びおこし、臆病と無識の権化のようなこの俺は、狷介不覊けんかいふきの華族論客として、日に日に名声を高めることになった。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
吾人は嘗て彼の原稿なるものを見しことあり、其改刪かいさんの処は必ず墨黒々と塗抹とまつしてけづりたる字躰の毫も見えざる様にし、絶えて尋常書生の粗鹵そろなるが如くならず。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
わたしはもとよりその間の消息を知らない、またここでその詮議立てをする必要もないのであるが、唯ここでひと言いって置きたいのは、局外者の脚本がたといいろいろの改刪かいさんを経たにしても
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)