あやつり)” の例文
お菓子屋や、オモチャ屋や、のぞき眼鏡や、風船売りや、あやつり人形なぞがお寺の門の前には一パイに並んで、それはそれは賑やかなことでした。
ルルとミミ (新字新仮名) / 夢野久作とだけん(著)
で、あやつりの糸の切れたがごとく、手足を突張つっぱりながら、ぐたりと眠る……俗には船をぐとこそ言え、これはいかだを流すてい
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かくて遂には西の宮の産所の様に祝言すなわちホカイを述べるホカイビトになり、次にえびす舞わしから遂にあやつり人形の座ともなるに至ったのでありましょう。
なまなか光り物を抜いたり月並つきなみ凄文句すごもんくをならべないだけに、かえって底気味の悪いことは、倍で、さすが気の強い当世のはすらしい紫頭巾の娘も、糸の切れたあやつりのように
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、私は急に魂を奪われた人間のように、藻抜もぬけの殻の肉体だけが、舞台の上であやつり人形のように、周囲の人達の動くのに連れられて、ボンヤリ動いていたのに過ぎませんでした。
ある恋の話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
多くは土色をした土偶でくのようなものであった。これらの人々は読み方や、算術や、習字を教える機械に雇われているバネ仕掛けのあやつり人形であって、有肺人類には属しないものであった。
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
お前は自分をあやつり人形と心得ておれ。そして万事、父の指図の通りに竿を操り、からだを動かせ。そこに私心があってはいけない。つまり、父の教えた方法に自分の工夫をまじえてはならぬのだ。
(新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
まるであやつり人形みたいに、ピョコピョコと踊り狂うって云いますぜ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
不便ふびんさもかばかりなるは、と駈け着けるうちあやつりの糸に掛けられたよう、お雪は、左へ右へ蹌踉よろよろして、しなやかな姿をみ、しばらく争っているようでありました。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
廊下からかがんで乗り出し、下からひざまずいて出しました娘の貢物くもつを受け取つて、高く頂き、よたりと背後うしろむきになりますると、腰を振ってひょこひょこと、棟からあやつりの糸で釣るされたような足取りで
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)