摂津守せっつのかみ)” の例文
旧字:攝津守
木村芥舟先生は旧幕府きゅうばくふ旗下きかの士にして摂津守せっつのかみと称し時の軍艦奉行ぐんかんぶぎょうたり。すなわち我開国かいこくの後、徳川政府にてあらた編製へんせいしたる海軍の長官ちょうかんなり。
「わしを説くまえに、荒木村重を説いて来い。摂津守せっつのかみ村重が、離反は思いとまろうというたら、わしも思い止まるであろう」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若君は十六歳の春、後見を解かれ、摂津守せっつのかみに任官して正篤と名のり、松平玄蕃頭げんばのかみの女で、十七になる順子よりこと結婚した。
桑の木物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
忠兵衛の子がまだ皆いとけなく、栄次郎六歳、安三歳、五百いお二歳の時、麹町こうじまちの紙問屋山一やまいちの女で松平摂津守せっつのかみ義建ぎけんの屋敷に奉公したことのある忠兵衛の妻は亡くなったので
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
土井摂津守せっつのかみ利勝としかつからわかれたおなじ一家。数馬なんかにくらべると、このほうが血筋が近い。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
摂津守せっつのかみも以前から源氏に隷属していた男であったから、公然ではないが好意を寄せていた。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
艦長木村摂津守せっつのかみ、指揮官勝麟太郎かつりんたろうをはじめ、運用方、測量方から火夫水夫まで、一切西洋人の手を借りることなしに、オランダ人の伝習を受け初めてからようやく五年にしかならない航海術で
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さき摂津守せっつのかみの悩んでいた人面瘡にんめんそうででもございましょうか。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「太田摂津守せっつのかみ様ア——」
そのすさまじい眼はさすがに摂津守せっつのかみ村重として世に聞えている武勇をも思い出させるものだった。……しばらくはそうしていた。そしてやがて
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いけはたの下邸に尾張侯、酒井日向守ひゅうがのかみ、酒井大学頭、松平摂津守せっつのかみなどを招いて恒例の具足祝いをしたが、酒狂乱舞のさなか、見あげるような蓬莱山ほうらいさんのつくりものを据えた十六人持ちの大島台おおしまだいかつぎだし
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
はなわ九郎右衛門、荒木摂津守せっつのかみ、武井夕菴せきあん、そのほか柴田、丹羽、佐久間、蜂屋兵庫守ひょうごのかみなど——何しても、その行装ぎょうそうの壮観、式のおごそかなことは、仰山ぎょうさんともいえるほどだった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ときに、噂を聞いたか。摂津守せっつのかみの暴挙を。あの荒木村重が、ばかな真似をしでかしおった噂を」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長尾遠江守——中条越前守——柿崎和泉守——甘糟あまかす近江守——宇佐美駿河守——和田喜兵衛——石川備後びんご——村上左衛門尉義清——毛利上総介かずさのすけ——鬼小島弥太郎——阿部掃部かもん——直江大和守——鮎川摂津守せっつのかみ——高梨政頼——新発田しばた尾張守
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)