控所ひかえじょ)” の例文
最初の一時間は何だかいい加減にやってしまった。しかし別段困った質問もけられずに済んだ。控所ひかえじょへ帰って来たら、山嵐がどうだいと聞いた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして、一同を尻目しりめにかけて、控所ひかえじょを出て行った。止せというのに、戸部近江之介が後を追った。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかしわたくしがこの楽屋をおとずれる時、入って休むところは座頭ざがしらの部屋でもなく、声楽家の控所ひかえじょでもなく、わかい踊子がごろごろ寝そべっている大部屋に限られている。
勲章 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「保本、——」と去定が振向いて云った、「控所ひかえじょに母親がいるから、二三日預かると云ってくれ、三日経ったらまた来るように、それまでに云い聞かせておくと云ってくれ」
代診だいしんのセルゲイ、セルゲイチは、いつも控所ひかえじょ院長いんちょうるのをっている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
走者ラナー(通過しつつある者)ある事情のもとに通過の権利を失うを除外アウトという。(普通に殺されるという)審判官アムパイア除外と呼べば走者(または打者ストライカー)はただちに線外にでて後方の控所ひかえじょに入らざるべからず。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
伊達家諸士だてけしょし控所ひかえじょ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤シャツはおれ等の行為こういを弁解しながら控所ひかえじょを一人ごとにまわってあるいていた。ことに自分の弟が山嵐を誘い出したのを自分の過失であるかのごとく吹聴ふいちょうしていた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
控所ひかえじょは、かべおおきい額縁がくぶちはまった聖像せいぞうかかっていて、おも灯明とうみょうげてある。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
喧嘩をしても、回向院えこういん相撲すもうのような心持ちのいい喧嘩は出来ないと思った。そうなると一銭五厘の出入でいり控所ひかえじょ全体をおどろかした議論の相手の山嵐の方がはるかに人間らしい。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)