捫着もんちゃく)” の例文
よいに乗じて種々いろいろ捫着もんちゃく惹起ひきおこしているうちに、折悪おりあしくも其処そこへ冬子が来合わせたので、更にこんな面倒な事件を演出しいだす事となってしまった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
無法にもシッキムの地域内に城を築いたものですから、英国政府の方でも黙っては居らない。その捫着もんちゃくが持ち上って遂に今より十六、七年前に
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
生前にいろいろの着物を縫って着せるのが楽しみであった人形を入れてやろうかやるまいかということについて、女の連中がまた捫着もんちゃくしていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
後に残った三人の女、浜路にお仙にそうしてお吉、茫然として見送ったが、これは一捫着もんちゃく起こらなければなるまい。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
三百万円の償金を出せと云うことになって、捫着もんちゃくの末、ついにその償金を払うことになった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
じゃ、何もかも私のことが原因もとで屋形と捫着もんちゃくき起しているようなことをいって手紙をよこしていながら、それは皆なこしらえ事で真相ほんとうは三野村のことが原因だったのですな……どうも、そうでしょう。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
この時、群集ぐんじゅ押分おしわけて、捫着もんちゃくの中へ割って入ったのは、駐在所の塚田つかだ巡査。年のわかい、色の黒い、口鬚くちひげの薄い、小作りの男であった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お庄を速く呼びかえせと言って、芳太郎がお袋と長いあいだ捫着もんちゃくしたあげくに、争いが爺さんの方へも移って行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
うするとサア二十日の期限がチャント来た。十九日に手紙が来たのだから丁度翌月十日、所がもう二十日まっれろ、ソレは待つの待たないのと捫着もんちゃくの末、どうやらうやら待て貰うことになった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この春になってから、冬坡がとかくに句会を怠けがちであったのも、そんな捫着もんちゃくのためであったということが今わかりました。
鴛鴦鏡 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
奥の四畳半で、一ト捫着もんちゃくした後で、叔父の羽織がくしゃくしゃになって隅の方につくねてあった。叔母は赤い目縁まぶちをして、お庄が上って行っても、口も利かなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それに対する我当の弁解は、先年の捫着もんちゃくはそのあいだに種々の事情が潜んでいることで、先輩に対してあえて無礼を働いたというわけではない。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
自分の頭の上でこんな捫着もんちゃくを始められては、市之助ももう打棄うっちゃって置かれなくなった。彼はよんどころなく起き直った。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
芝居でするように、こゝで敵役のわる侍なんぞが邪魔に這入らないんですから、お話がちっと面白くもないようですが、どうも仕方がありません。ところが、こゝに一つの捫着もんちゃくが起った。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こうした捫着もんちゃくがたびたび続くので、半七も少しおかしく思って、もうつくろってしまった泥下駄を再びいじくるような風をして横眼でそっと窺っていると、按摩はあくまでも強情に振り切って
半七捕物帳:09 春の雪解 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何やかやと捫着もんちゃくしているうちに、徳蔵の声はだんだん大きくなるので、山城屋の主人もを折って、かれの要求する三百両に対して百両を提供して、この以上はどうしてもくことはならない
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それが一種の口実こうじつであることは大抵想像されているものの、何分にも旅さきの事といい、その妻ももう此の世にはいないので、事実の真偽を確かめるのがむずかしく、たがいに捫着もんちゃくをかさねた末に
その捫着もんちゃくから延津弥が殺意を生じたのであろうと解釈する者もある。
廿九日の牡丹餅 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)