按察使あぜち)” の例文
おそばにいるはずの按察使あぜちの君も時々通って来る源中将が無理に部屋のほうへ呼び寄せたので、この小侍従だけがお付きしているのであった。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
灯はなく、天皇の御寝ぎょしの場とて、すぐそこの炉の床だった。そして按察使あぜちノ大納言資名すけなは、土間へじかにむしろを敷き、破れ壁にもたれて、眠るともない姿でいた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その河原の左大臣源融みなもとのとほるはわかい時分に陸奥の按察使あぜちとして行かれた土地の中でも、この港の景色を殊に恋しく思ひ出されてその豪しやな河原の院の庭を作つたのであらう。
東北の家 (新字旧仮名) / 片山広子(著)
按察使あぜちの大納言資賢すけかた和琴わごんを鳴らし、その子右馬頭資時うまのかみすけとき風俗ふうぞく催馬楽さいばらを歌い、四位の侍従盛定もりさだは拍子をとりながら今様いまようを歌うなど、和気藹々あいあいのうちに得意の芸が披露されていた。
按察使あぜち紀広純を殺すという大騒ぎになりました。
本州における蝦夷の末路 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
兵部卿の宮が中宮のお宿直とのい座敷から御自身の曹司ぞうしのほうへ行こうとしていられるところへ按察使あぜち大納言家の若君は来た。
源氏物語:45 紅梅 (新字新仮名) / 紫式部(著)
嬉々ききとしていまわっている嬰児えいじがあるので、或る人が、何人なにびとの子におわすかと訊いたところ、按察使あぜち資賢すけかたの息女玉琴の子であると上人がいわれたので、訊いた者は
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
按察使あぜち大納言といわれている人は、故人になった太政大臣の次男であった。柏木かしわぎ衛門督えもんのかみのすぐの弟である。
源氏物語:45 紅梅 (新字新仮名) / 紫式部(著)
按察使あぜちノ大納言資名すけな
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前の按察使あぜち大納言はもうずっと早くくなったのでございますからご存じはありますまい。その夫人が私の姉です。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
左大臣がくなったので、右が左に移って、按察使あぜち大納言で左大将にもなっていた玉鬘夫人の弟が右大臣に上った。
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
今日は按察使あぜち大納言家へ兵部卿ひょうぶきょうの宮が来ておいでになった。以前よりもずっと邸が荒れて、広くて古い家に小人数でいる寂しさが宮のお心を動かした。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
北山へ養生に行っていた按察使あぜち大納言の未亡人は病がくなって京へ帰って来ていた。源氏は惟光これみつなどに京の家をたずねさせて時々手紙などを送っていた。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
例のような目のさめがちなひとり寝のつれづれさを思って按察使あぜちの君と言って、他の愛人よりはやや深い愛を感じている女房の部屋へやへ行ってその夜は明かした。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
按察使あぜち大納言、式部卿しきぶきょうの宮様などから婿君にといって懇望されていらっしゃったのを無視しておいでになったあとで帝の御秘蔵の宮様を奥様におもらいになった方だもの
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
高級役人や殿上人の饗膳きょうぜんなどは内蔵寮くらりょうから供えられた。左大臣、按察使あぜち大納言、とう中納言、左兵衛督さひょうえのかみなどがまいって、皇子がたでは兵部卿ひょうぶきょうの宮、常陸ひたちの宮などが侍された。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
罪に問われることは、支那しなでもここでも源氏の君のようなすぐれた天才的な方には必ずある災厄なのだ、源氏の君は何だと思う、私の叔父おじだった按察使あぜち大納言の娘が母君なのだ。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
雲井の雁の実母である按察使あぜち大納言の夫人も、娘がよい婿を得たことで喜んだ。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
按察使あぜち大納言の娘、左衛門督さえもんのかみの娘などが出ることになっていた。それから殿上役人の中から一人出す舞い姫には、今は近江守おうみのかみで左中弁を兼ねている良清朝臣よしきよあそんの娘がなることになっていた。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
多情な御性質であるから、あの按察使あぜち大納言の家の紅梅の姫君をもまだ断念してはおいでにならず、なお花紅葉もみじにつけ好奇心の対象としてそこへも御消息はよこしておいでになるのである。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)