手取早てっとりばや)” の例文
けれど、手遅れになるといけませんから、ぐずぐずしないで手取早てっとりばやく、正直にあなたの事件をすっかりお話しになってくれませんか
黄色な顔 (新字新仮名) / アーサー・コナン・ドイル(著)
例のくせで、僕は饒舌になりすぎた様だ。道草はよして姉崎家を訪ねることにしよう。そしてなるべく手取早てっとりばやく犯罪事件に入ることにしよう。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
これでは……その時の私と、由紀とのうけこたえに、女のものいいが交りましては、お申憎うございますから、わけだけを、手取早てっとりばやく。……
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、ここにはこの中の一、二節を引いて記述する間緩まだるこい真似まねをするよりは手取早てっとりばやく渠らの生活の十分現れてる松岡緑芽まつおかりょくがの挿画を示すが早手廻はやてまわしである。
政府へ納められて盗賊どろぼう役人だかも知れない役人の月給などになるのではなく、すぐに骨董屋さんへ廻って世間に流通するのであるから、手取早てっとりばやく世間の融通を助けて
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
どうせ一度は貰うものならと云う気になって、案外手取早てっとりばやく話はきまってしまった。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
最も手取早てっとりばやくいえば私は詩人という特殊なる人間の存在を否定する。
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
一家の葛藤を処理するためのいささかの金ですらが筆のかせぎでは手取早てっとりばやく調達しがたいのを染々しみじみと感じたかれは、「文学ではとても駄目だ。金儲かねもうけ、金儲け!」
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
春は過ぎても、初夏はつなつの日の長い、五月中旬なかば午頃ひるごろの郵便局はかんなもの。受附にもどの口にも他に立集たちつどう人は一人もなかった。が、為替は直ぐ手取早てっとりばやくは受取うけとれなかった。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それという声がかかると、手取早てっとりばやく二人の姉分の座敷着を、背負揚しょいあげ扱帯しごき帯留おびどめから長襦袢ながじゅばんひもまで順序よくそろえてちゃんと出して、自分が着換えるとその手で二人分の穿物はきものを揃えて
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
買いにろうかとも思ったが、かたのごとき大まかさの、のんびりさの旅館であるから、北国一の電話で、呼寄せていいつけて、買いに遣って取寄せるひまに、自分で買って来る方が手取早てっとりばやい。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)